ツール・ド・サンルイス2016 5日目
ツール・ド・サンルイス 5日目
クラス:1クラス ステージレース
開催国:アルゼンチン
距離:168.7km
天候:晴れ
コースはレンカを出発し南西方向に進んでいき、サンルイス近くのジュアナ・コスライにゴールする平坦コース。
62.5kmと144.8km地点に中間スプリントポイント地点が設置されているのみで、本日は山岳ポイント地点は無し。
レース前のミーティング
バスで1時間半かけて会場に到着後、車内でミーティング。
今日は昨日までと違い逃げに乗ることを狙って行き、逃げることが出来ればその際は余力を残して逃げるように、出来なければ集団内で他の選手と固まって動くようにという指示。
レースレポート
トイレに行っていたためスタートラインに並ぶのが遅れ集団中盤に並ぶ。
パレードスタートが始まり集団右側から前に上がって行く。
先頭が見えるくらいの位置まで上がったところでリアルスタート地点を通過し、レース開始。
今日は逃げる為のアタック合戦がかなり活発。
追い風の影響もありかなりの速度でアタック合戦が続いている。
集団の右側で前に上がるタイミングを見計らっているが、なかなか前にスペースが出来ない。
集団の左側はスペースがあるようで前に上がって行っている選手がたくさんいる。
集団内を右から左に移動するのも大変なのでしばらく右側で前にスペースが出来るのを待つ。
結構待っていたがスペースが出来る気配すらない為、左側に移動して前に上がって行く。
前に上がると言っても簡単には上がれない。
集団のペースが緩んだ瞬間や前にスペースが出来た瞬間を見つけては少しずつ先頭に近づいて行く。
やっとのことで先頭付近まで上がることに成功し、今日のアタック合戦の状況が掴める。
基本的にはワールドツアーチームが逃げようとするのを他のワールドツアーチームが潰している。
その為ペースが速い。
そしてワールドツアーチーム同士の潰し合いの隙を突いてそれ以外のチームが逃げようとする。
そしてそれに逃げたいワールドツアーチームが反応して追いかけることで飛び出しが潰れるというパターンを繰り返す。
ワールドツアーチーム以外の選手が2人飛び出す。
自分もそれに反応して集団から飛び出す。
しかし、集団が追って来て追いつかれる。
そんなことを繰り返す。
ワールドツアーチームが逃げようとしていることもあり、初日の様に簡単には決まらない。
再び2人が飛び出して自分が追いかけて追いつく。
そこに自分が追いつく。
後ろを振り返ると数名が追加で追いかけて来ているが集団は結構離れている。
前に合流しローテーション開始。
他のメンバーも逃げたいらしく全力で踏み込んでいる。
しかし、そこにワールドツアーチームのモビスターの選手が追いついてくる。
たぶんこの飛び出しは決まらない。
それを追いかけて同じくワールドツアーチームのランプレとAG2Rの選手が追いついてくる。
そこからは、その3人がお互いにアタックの仕掛け合いを始めて他の選手は蚊帳の外。
アタックに反応する選手に自分も付いて行き遅れないようにするが付いて行くだけでかなりキツイ。
最終的に集団が追いついて来て吸収される。
今の動きでかなり疲労してしまい集団中盤まで下がってしまう。
そこから疲労を回復させて、再び前に上がろうとしている最中に逃げが決まったらしく集団のペースが落ちた。
スタートから20kmくらいの距離の事だったと思う。
そこからは少し落ちたペースでレースが進む。
とは言っても追い風が強いこともあり、しんどくは無いがかなり速い。
その後、逃げ集団とのタイム差が開いたことでペースが上がる。
今日はチームのメンバーから離れてしまわないように気を付けて走る。
離れてしまった際には、急いで追いつこうとはせずなるべく楽に合流できるように考えて走る。
コースの進行方向が少し変わり横からの風が若干強くなる。
ここで集団のペースがより一層速くなる。
理由は簡単で集団の後方で休んでいる選手を疲れさせるためだ。
レース中は前にいる選手の真後ろに入ることでその選手が風除けになり楽に走ることが出来る。
したがって、先頭で走っている数名の選手は他の選手よりもしんどい思いをしている。
先頭で走っている数名の選手はその選手のチームのエースを勝たせるためにしんどい思いをしているわけで。
後ろに付いて来ているその他大勢の選手に楽な思いをさせる為に先頭で走っているわけではない。
出来る事なら後ろにいる関係のない選手にはしんどい思いをしてほしいと思っている。
そこで横風の区間を利用する。
横風の区間では真後ろに付いているだけでは横からの風を受けてしまうので、先頭とそこまで変わらないしんどさになる。
その為前に選手の風下側に半車輪分くらい差し込む。
そうすることで風上からの風に対して前に選手を風よけにでき、普段後ろに付いているぐらいの楽さで付いて行くことが出来る。
したがって横風区間では集団の先頭から風下に向けて選手が斜めに並んでいる光景が良く見られ、それをエシュロンと呼んだりする。
風下に向けて斜めに並んでいくわけではあるが道路の幅には限界があるので風下側に並べる選手は先頭の何人かに絞られる。
それより後ろの選手は前の選手の後ろに入る事しかできず先頭とあまり変わらないしんどさを味わうのである。
先頭を走っている選手はギリギリ自分のチームの選手だけが風下側に入れる位置を走り、自分以外のチームの選手に苦しい思いをさせるのである。
少し弱めとはいえ横風の吹く区間でのペースアップ。
実力の無い選手は付いて行けずに遅れていく。
遅れていった選手のせいで開いてしまったスペースを埋める為にペースがさらに上がる。
結果として先頭よりも速い。
そのペースアップに耐えられなった選手が遅れ、そのスペースを埋める為に更にペースが上がり……
この悪循環も横風区間で後ろが辛い原因でもある。
今回自分がいる位置はそこまで後ろでもないので、あまり悪循環の影響は受けていない。
それでも1人の選手が耐えきれずに遅れていく。
その姿をみて去年もこのコースを走ったことを思い出した。
去年はこの区間で自分も耐えきれずに遅れてしまい、追いつく為に相当苦労してしんどかった。
今年は少し余裕を持って付いて行けている。
今年の速さが去年と一緒かどうかは分からないので一概には言えないが、強くなっているという証拠だろうか?
横風区間が終わり再びチームのメンバーと固まって走る。
何度かチームカーを呼んで水を受け取りに行きチームのメンバーに配る。
今日も相変わらず暑いので飲むにしても体にかけるにしても水は必需品。
水を切らしてしまってはレースどころではなくなる。
その後逃げ集団への本格的な追い上げが始まりかなりの速度でレースが進む。
速度が上がってからも何度か弱めの横風区間を通り、徐々に疲労が溜まっていく。
疲労は溜まって来てしんどいとは思うが集団から遅れてしまう程では無いなと思いながら走る。
そして下り基調の山間部へ入っていく。
追い上げの為に速度が速いことに変わりはないが、山間部に入れば横風は無くなるので一安心。
ラスト30kmの少し手前。
チームで固まって集団の左側から前に上がろうとする。
前に上がる為にグレガが先頭で風を受けていたので自分が風除けになる為に、更に左側から前に出る。
自分が先頭で集団の左側をドンドン前に上がって行く。
勢いよく上がり過ぎたせいで集団の先頭を走っているクイックステップと同じ位置まで前に出てしまう。
チームのメンバーも後ろに付いて来て前に上がって来ていたが、上がり過ぎ!という感じで後ろで若干怒っている。
確かにラスト30kmも有るのに今先頭に出る意味は無い。
どこかのチームの後ろに入る必要があるなと思いながら、集団の先頭を走っているクイックステップの方を見る。
次の瞬間クイックステップの先頭から2番目の選手の後輪と3番目の選手の前輪が接触。
3番目の選手が盛大に吹き飛ぶ。
当然その後ろにいたクイックステップを含む大量の選手を巻き込んでの大落車が発生。
自分の方にもこけた選手のサングラスのレンズが外れて吹き飛んでくる。
一瞬ビックリしたが大丈夫だと判断し、この危険地帯から一刻も早く去る為に逆に踏み込む。
偶然に先頭まで上がっていたことが幸いし、自分達の隊列の最後尾にいたスタキオッティが足止めを食らっただけで他のチームメイトはこの落車の影響を一切受けずに済んだ。
集団のペースを上げていたクイックステップの選手が大量に落車したことにより集団のペースが一気に落ちる。
そこから結構な間落車に巻き込まれた選手が集団に追いついてくるのをユックリのペースで待ったあと再びペースアップ。
ゴールと逃げ集団の吸収に向けてハイペースで進んでいく。
ラスト1kmのゲートを対向車線に見ながら下っていく。
残りの距離は10kmと少し。
ラスト8kmのロータリーでUターン。
去年はこのロータリーを抜けて、ポッツォに後ろから「ゲンキ行く!行く!」と日本語で叫ばれながら前に上がって行ったのを思い出す。
下りでチームメイトから遅れていたので集団の右側から前に上がろうとスペースを探す。
ラスト10kmを切っているので誰もが前に居たいのでスペースなど無い。
走行しているうちにラスト4kmの看板を過ぎる。
そしてその少し後、集団が左に寄り右側にスペースが出来る。
ここで上がるしかない!と思い一気に前まで上がる。
集団の右端の先頭に出たところで前を見る。
2人の選手が飛び出している事に気付く。
その内の1人は白いジャージの胴回りにストライプが入っている。
アルカンシェル!?
アルカンシェルとは前年度の世界選手権で優勝した選手のみが1年間切ることのできるジャージで真っ白なジャージの胴回りに青、赤、黒、黄、緑のストライプが入っている。
昨年の世界選手権で優勝したサガンが飛び出している!?
集団の様子を見ると追いかける気配が無い。
なぜかは分からないがこれは追うしかない!と思い集団からアタック。
普通に考えればサガンに追いつけるハズが無いが頑張るしかない!
全力で踏んで追いかける。
なぜかジワジワと差が詰まっていく。
振り返ると集団とも結構差が出来ている。
このまま追いつくしかない!と思い引き続き全力で追いかける。
徐々に飛び出した2人に近づいて行く。
そして気付いた。
アルカンシェルじゃない。
真っ白なジャージの胴回りに赤、白、赤のストライプ、コスタリカ選抜だった。
どうりで差が詰まる訳である。
仕方がないので頑張って追い付いてから後ろを振り返る。
集団から結構飛び出している。
前にアルカンシェルは居なかったがこれは大チャンス!
ラスト3kmを切っている!
逃げ切りの可能性がある!
3人で協力してローテーションして集団から全力で逃げる。
2日目と違い、なぜか近くにテレビ中継用のカメラも先導車もいないが気にしている場合ではない。
他の2人も逃げ切る為に全力で踏んでいる。
出し惜しみしている場合ではないので自分も全力で踏んでいく。
ラスト1kmのゲートをくぐる。
集団はまだ遠い。
これなら逃げ切れる。
ラスト500mを3番手で過ぎる!
自分の前の選手がゴールスプリントの為に加速する!
そこまで速くない!
これなら最後に追い抜ける!
ラスト200m!
さぁ!ここからスプリントするぞ!
その瞬間右から選手が現れる。
集団に追いつかれていた。
ビックリしたが少しでも上位でゴールしようと踏み込み直して付いて行く。
そのままゴールスプリントしている集団に紛れてゴール。
集団ではグロースが3着に入った。
しかしグロースは6位だった。
なぜなら逃げ切りの選手が3人居たから。
だから2人飛び出していた時に集団の追う気配が無かったのだと理解した。
そして集団に吸収されてゴールして良かったと思った。
なぜなら、もし集団から飛び出した3人の内で1着でゴールしていれば4位であるにも関わらずガッツポーズするという非常に恥ずかしい状態になっていたからである。
感想
逃げに乗るのはやはり難しいと改めて実感した1日だった。
それだけに1回1回の逃げを大切にする必要があるとも感じた。
また、去年と比べて自分が強くなっていると感じることも出来たので良かったとも思う。
レースのゴール直前では勘違いの連続で大変な事になってはいたが、結果として20位でゴールすることが出来たので良かった。
キツさレベル
6
横風区間では苦しんだが、レース全体として比較的多くの時間、集団内にいてやすんで走ることが出来たのでそこまでしんどいとは感じなかった。
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