トロフェオ・ライグエリア
トロフェオ・ライグエリア
クラス:HC ワンデーレース
開催国:イタリア
日程:2月14日
距離:192.5km
天候:曇り
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、グレガ・ボーレ、ピエールパオロ・デネグリ、ジャンフランコ・ズィリオーリ、イウリ・フィロージ、山本・元喜、エドワード・グロス、ジャコモ・ベルラート
ライグエリアを出発し、ライグエリアに帰って来る周回コース。
周回コースとは言ってライグエリア周辺のも様々なコースを回る。
400m級の登りを2つ含む100km程の周回を1周してスタートラインにスタートと逆向きに戻ってきた後に、400m越えの登りを含む60km近い周回を回った後に、急な登りと緩い登りの2つを含むライグエリア周辺の小さな周回を3周するコース。
レース前のミーティング
今日もいつも通り逃げに乗って行けという指示。
エトルフスキー終了後からライグエリアでも逃げろとは何回も言われていた。
逃げに乗れなかった際の指示は出なかったが、結局はクネゴとボーレの側にいるしか無い。
ライグエリアでチームキャンプを行っていたことでレースコースは何度か走ったが、自分が最後まで残れるようなコースでは無いので、もし逃げれなければただのお荷物だろう。
レースレポート
スタートラインに並びに行ったのは結構ギリギリの時間ではあったが上手く前方に並ぶことができた。
パレードスタート中にドンドン前に上がって行きリアルスタートラインに着くころには集団の先頭に出ることができた。
集団の先頭ド真ん中に並ぶ半袖半パンの日本人。
レース開始。
飛び出しがかかる。
しばらくは様子見しつつ逃げることができそうな飛び出しがあれば反応することに。
チームメイトも先頭付近に集まってきており交互に反応している。
今日の逃げは競争率が高い。
基本的に少人数の逃げには各チーム1人ずつしか送り込むことができない。
1つのチームから2人が逃げ集団に入るとそのチームにかなり有利な逃げになるので他のチームが潰すからだ。
緩めの登りでの飛び出しに反応してみたりするが決まらない。
集団に追いつかれてから集団の比較的前方に合流する。
先頭付近に合流することはできるのだが、今回のコースが比較的狭く曲がりくねっているせいでビビってしまい集団内を下がって行ってしまう。
隙を見ては先頭付近に上がり直し、決まりそうな飛び出しに反応を繰り返す。
1回1回集団内を下がってしまう為、反応する回数が結構少ない。
幸いなことに逃げは決まっていない。
道が緩やかに登りだす。
もうしばらくすれば本格的に登りが始まる。
登りが始まれば力ずくの逃げが決まる可能性がある。
逃げが決まらないまま本格的な登りが始まる。
それと同時にノルダの選手が飛び出す。
数名がそれに反応して追っているが追いつかず3人ほどが集団から飛び出しそれぞれ登っている感じ。
自分は登りでの飛び出しに備えて前に上がっており、集団の左側に隙間ができたのでそこから飛び出し前を追う。
すぐにノルダ以外の選手を抜かし、前を追うが30m程の差が縮まらない。
集団が少し遅れて追って来ている。
登りは平坦と違い速度が遅くなるので空気抵抗が少なくなる。
その為、他の選手の後ろに付いていてもそこまで楽にはならない。
これは追いかける集団に不利である。
なぜなら追うために先頭の選手がペースを上げると後ろにいる選手も先頭と同じくらい疲労するからである。
飛び出した側は自分の限界ギリギリの一定のペースで走り続ける。
集団の先頭はそれに追いつく為にそのペースよりも速い相当キツイペースで追い上げる。
そしてしんどくなると交代する。
2番目の選手が先頭に出るのだが1番目の選手がペースを上げた際にダメージを負っているのでペースが落ちたりペースを維持してもすぐ交代したりする。
最終的に追いつくか、ペースの上げ下げに耐えきれず逃げを容認するかのどちらか。
こうして決まるのが登りでの力ずくの逃げ。
ちなみに集団が追いついた際には全員疲労しまくりのキレが無い中で飛び出しの掛け合いが続くので泥沼化する。
しばらく前のノルダのみを見据えて踏み続けていると無線から「ゲンキ!良いぞ!」という声が聞こえる。
振り返ると、集団は諦めたようで見えなくなっている。
今回のレースでの登りは体が軽い。
練習で走った感じから登りばかりのレースだと思ったので体重を少し意識的に落としてみたのが功を奏しているようだ。
前を行くノルダの選手との差は少しずつ近くはなっているが追いつくまでにはまだ時間がかかりそう。
ここで無理に追いつくことも出来はするが、そうした場合疲労の度合いがかなり変わって来る。
いずれ追いつけるようであれば無理して余分に疲労する必要は無いし、追いついて後ろに入ってもそこまで楽にはならない。
そう考えながら後ろを確認すると、集団から飛び出して追い上げて来ている選手が6,7名居る!
これに追いつかれてしまっては逃げのメンバーが多すぎるので集団に潰されてしまう。
そもそも後ろにいる数名の飛び出しが発生している時点で、集団がペースを上げ直して追い上げて来ていることは確実だ。
後ろの数名に追いつかれれば集団に追いつかれることは確定。
追いつかれるのであればノルダも一緒に追いつかれて振り出しに戻すしかない。
そう思い、少し無理をしてペースを上げる。
ノルダとの差の詰まり方が今までより速くなる。
登りの折り返しを利用して追って来ていたメンバーの様子を見ると先頭の選手はさっきより近付いて来ているがバラけている。
少しして先頭で追って来ていたアモーレ・エ・ビータの選手に追いつかれ2人になる。
「一緒に追いつこう」と言われアモーレの選手を先頭にノルダの選手に追いつく。
他の追って来ていた選手は散った。
3人になり勾配が緩めになったところで集団とのタイム差が2分だと教えられる。
まさか自分が登りで力ずくの逃げを決めるとは思わなかった。
そこからは3人で少し長めに先頭を走って交代しながら逃げる。
前日から早朝にかけての雨の影響で路面が湿っている。
アモーレとノルダの選手が相当警戒しながらゆっくりコーナーを曲がるのでコーナーが苦手な自分としてはかなり助かる。
本格的な下りに入り、練習で走った時よりも遅いペースで下る。
下り切って平坦区間に入り、ノルダの選手が「1人500mくらいで交代しよう」言って来たのでオッケーと返事すると「そういえばいっつも逃げてるな!」と言われる。
他の選手の印象に残るような走りが出来ていて嬉しい。
そこからは500mずつぐらいで先頭を交代して走る。
エトルフスキーと同じ失敗をしないようにできる限り足を残して走るように気を付ける。
具体的には、500m程で交代とは言ったものの他の2人は600mぐらい先頭を走っているが、自分はメーターを確認してキッチリ500mで交代。
最低ラインを確実に守りつつセコく走る。
タイム差は逃げが30km後半で決まってから20数km走った60km辺りで8分差。
そこから4km程行ったところで10分差に広がる。
ノルダの選手が「去年はずっと3,4分差やったのにな……」と言っている。
2つ目の登りが始まる。
ある程度のペースで登る。
少ししんどい程度。
全然問題は無い。
しかし、他の2人には苦しんでいると思われた方が登りが終わってからの区間で、先頭を行く距離を短くしたりして楽をしても文句を言われにくくなるはず。
しんどさを3割増しくらいで表現しながら登る。
あまり先頭に出ないように少し離れて走り、先頭に出るように要求された際にも少しペースを落としながらも頑張って踏んでます感を出す。
ちなみに日本のレースでは実力がだいたいバレているのでこれをやっても意味が無い。
「良く分からない日本人」という立場だからこそやって意味のある行為である。
ここで多少ペースが落ちたところで集団には追いつかれないし、どこで追いつくかは集団が決める。
メイン集団的には残りの距離が多い状態で逃げに追いついてしまうと逃げる為の仕掛け合いが再発してしんどいので、残りの距離に対してタイム差が詰まり過ぎと判断すれば集団もペースを落として再びタイム差を広げる。
そこからは順調に登っていく。
この山頂には山岳ポイントが設定されている。
今回のレースは「2回目と3回目の山頂」と、「小さい周回のキツい登りの頂上に毎回」の合計5つの山岳ポイントが設定されている。
1位から3位まで順に5pt、3pt、2pt、が与えられその合計ポイントによって山岳リーダー賞が与えられる仕組みである。
山岳ポイントを狙うつもりはない。
ここで山岳ポイントを狙いに行く動きをすると「コイツ演技してたやろ!」となるからである。
山岳ポイントラスト1kmの看板を過ぎる。
ラスト500m辺りでノルダの選手がアタックをかけて飛び出す。
アモーレの選手は反応しない。
アモーレの選手と2人で登る。
ラスト200mの看板を過ぎる。
気が付いたらダッシュしていた。
アモーレの選手と争いながら山岳ポイント2位通過。
やってしまった。
アモーレの選手があまり狙うつもりが無さそうだったので本能的にダッシュしてしまった。
やって閉まった事は仕方がない。
「限界だけどダッシュしました」という感じで走る。
その後3人で交代しながらアップダウンを越え再び下りに入る。
前回の下りより路面が乾いて来ていることもあり少し速めのペースで下る。
下り切ってしばらく行ったところでタイム差5分。
結構詰めて来ている。
登りでペースを上げて人数減らしのついでに差を詰めて来た感じだろう。
しばらく平坦区間を走る。
メーターを見ながら400mくらい先頭に出て交代するようにする。
平坦区間を走っている間に徐々にメイン集団がタイム差を詰めてくる。
3回目の登りに差し掛かったところで3分程のタイム差。
2回目の登りより少しキツイ。
楽をしようとしているにしてもやはり疲労はしている。
2回目の登りと同じように登る。
そろそろ来るかな?と思っている案の定アモーレの選手がアタックをかける。
反応して付いて行く。
千切れるほどキツくは無い。
しばらくしてペースが落ちる。
アモーレの選手が後ろを確認し2人が付いて来ていることを確認。
その後再びアタックしてペースアップ。
再び付いて行く。
息が上がっているのを大げさに表現し、相当キツいけど頑張って付いて行っているという感じを出す。
アモーレの選手が千切りたいのは間違いなく自分だろう。
自分がアモーレの立場でも同じことをする。
正直、邪魔でしかないだろう。
しんどそうに付いて来た上であまり先頭に出ず、なぜか山岳ポイントだけはダッシュしてくる。
この山頂にも山岳ポイントがあることも影響しているのだろう。
ちなみに今回の山岳ポイントは絶対に狙わないことにしている。
もう1度アタックがかかれば千切れても良いかもしれない。
ここの登りは練習で何度も登ったので地形はだいたい覚えている。
千切れて2人が見える位置をキープして一定のペースで走った方が、アタックに反応してインターバルを掛けながら走るよりは楽だろう。
見える位置で登っていれば山頂後の平坦区間で追いつくのは容易だろう。
そう思いながら登っていたが結局アタックはかからないまま山頂までラスト1km。
ラスト500mを越えラスト300m。
ノルダとアモーレの選手がダッシュして山頂争いを開始する。
自分は付いて行かず遅れて山岳ポイントを通過。
平坦区間で追い付く。
そこでメイン集団とのタイム差が1分を切る。
いつ吸収されてもおかしくない状況。
路面が乾いて来たこともありコーナーに結構なスピードで突っ込んでいき集団から逃げる。
タイム差は広がらず50秒あたりをキープ。
先導するバイクがコーナーに入る際のスピードとバイクの倒しこみ方からコーナーの深さを予想し、それに合わせてコーナーに入る速度を調整する。
ビビりながらも普通では出さないスピードを出して下る。
もしここでこければ崖下に落ちる可能性もあるのでそれだけは避けなければいけない。
そう思っているせいもあり、下り切ったところでは前の2人から結構遅れていた。
全力で踏んで何とか2人に追いつく。
かなりしんどかったがここで追いつけなければエトルフスキーと同じく逃げから千切れて集団に吸収という結果になっていたので仕方がない。
そこから3人でローテーション。
自分はとにかく短く、200~300mくらいで交代する。
楽をするためというのもあるが、少しでも長く逃げようと他の2人がペースを上げているのでそれ以上引くと足がもたない。
集団が吸収するのが早いと判断したのかタイム差が1分後半にまで広がる。
あとはここから千切れずに粘るだけ。
海岸線に出てアップダウンをクリアする。
かなりキツい。
疲労感がかなり来ているが頑張るしかない。
スタートラインを再び通過しライグエリア周辺の周回コースに入る。
周回コースに入った最初のキツい登りでノルダとアモーレの2人がアタック。
それに反応できず千切れる。
千切れてすぐに集団とのタイム差20秒と教えられる。
このタイム差であればアタックした2人も頂上までは逃げ切れないだろう。
教えられた通りにすぐ集団に追いつかれて抜かされる。
集団の人数も半分以下に絞られており、合流できるかな?と思い頑張ってみたが出来ずに遅れる。
その後チームカーから「良かったぞ!」と言われながら抜かれてレース終了。
チームではグレガが3位に入った。
感想
前回のエトルフスキーに続きHCクラスのこのレースでも逃げに入ることができたというのはかなり成長を感じれる結果だった。
最終的には千切れてしまったが集団に追いつかれる直前まで粘る事が出来たという事で全快と違い十分に仕事が出来たと感じることができた。
今回のレースはシーズン序盤のイタリアでのレースという事もありチームに関係する重要なスポンサーの方々が来られていた。
そういったレースで逃げてアピール出来たことでNIPPOというチームと自分に対して良い印象を持って貰うことができたと思う。
観客の人たちから千切れてからも「ヤマモト!良い逃げだったぞ!」と言ってもらえたので嬉しかった。
今がかなり好調っぽいのでそれを生かしてさらに強化していくことで、これからやって来る本格的なシーズンでも今と同じような動きが出来るように頑張っていきたい。
これからも積極的な走りを繰り返すことでチーム内外にアピールして記憶に残るような走りが出来るように頑張っていきたい。
日本はバレンタインデーで口の中を甘い味で満している人ばかりだというのに、自分はイタリアで口の中に血の味を滲ませながら頑張っているのだから、その分の強くなっても罰は当たらないはずである!
キツさレベル
8
全体的に楽をすることを第一に考えて走っていたこともあり限界まで追い込み切って疲労困憊になったという感じでは無かった。
しかし、ジワジワと溜まる疲労は来ていたので最終的なペースアップには付いて行けなかったのだろう。
今回のレースが登りがかなり多いにも関わらずエトルフスキーよりも楽に感じたのは最初に仕掛けたアタックの回数が少なかったのも理由にあると思う。
エトルフスキーでは恐らく13回、今回は5,6回だと思う。
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