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ジロ・デ・イタリア 7日目

ジロ・デ・イタリア 7日目

 

クラス:WT ステージレース

開催国:イタリア

日程:5月13日

距離:211km




天候:曇り後雨、そして晴れ

起床時体重:61.

起床時心拍:53

出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、イウリ・フィロージ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ

 

 

コースプロフィールは省略。

 

 

レース前のミーティング

 

ジュリアーニに今日の指示を確認しに行くと「今日は20km地点に山岳ポイントがあるのでそこまではクネゴがポイントを取れるように協力して動き、その後は誰が逃げに乗ってもいい」と言われた。

「逃げるか?」と聞かれたが「明日に逃げたい」と答え、「じゃあ今日は休みつつ走れ!」と言われた。

 

 

レースレポート

 

今日は「一昨日と同じ」平坦ステージ。

詐欺の香りがするので十分に気を付けて走ろうと考える。

短めのパレードが終わり広い道でアタック合戦が始まりすぐに逃げが決まる。

逃げが決まってすぐに無線から「コントロールするから前に上って来るように」という指示が出る。

フィロージが集団の右端を凄い勢いで上がって行った。

「今日は真面目なんだな」と感心する。

少し遅れて自分も集団の先頭に合流する。

スタキオッティ、ベルラート、フィロージ、自分、グレガの順に並んでローテーション開始。

始めはある程度のペースで長めに引いて交代していく。

自分の前のフィロージが短めで交代しようとし、後ろから「長く引け」と無線で指導される。

ここまで一貫していると逆に好感を持てる。

サボることを前提とした信頼関係という感じ。

フィロージの後に自分が引いて1周目のローテーションが終わる。

1周目のメンバーにジリオーリとビソルティを加えて2周目が始まる。

始まると同時にペースが上がる。

1人1人の引く距離を短めにしてかなりハイペースで平坦区間を進む。

自分が先頭で引いていた際の感じでは、確実にタイムトライアルで出す力以上に踏んでいた。

逃げとのタイム差を1分半くらいで保ったまま追い続ける。

詳しい作戦は分からないが、登りで吸収しようという魂胆なのだろうか?

自分はただローテーションの速度を感じ取りそれを維持するだけである。

11km地点を過ぎてすぐに前方に登りが見える。

山岳ポイントへの登りだ。

それが見えた瞬間にスタキオッティがローテーションから離脱。

戦力にならないと自分で判断したのだろう。

ジリオーリ、ビソルティ、ベルラート、自分、グレガ、の順で登りに入る。

入った瞬間に前の3人が一斉にボトルを1本捨てる。

少しでも重量を減らし早く登る為だろう。

自分もそれを見てすぐに1本捨てる。

登り出しからかなりのハイペースで突き進む。

後ろに付いているだけでも相当キツイ。

しかも各自がかなり長めに引くせいで先頭が回ってこずその間、延々と苦しみ続ける。

スタキオッティと一緒に離脱しなかったことを後悔するが今さら離脱することは出来ない。

1回だけでも引いて下がればいいだろう。

ベルラートが交代し自分の番がやって来る。

ペースを落とすことは出来ない。

短く引くのもアシストとして情けない。

「1回だけしか引かないのだから全力で頑張ろう」と思い。

限界に近い力9割ほどの力で踏んでいく。

残りの距離を確認しながら頑張る。

17km地点。

まだ頑張れば引くことが出来るが、そうした場合力を使い切り集団から一気に遅れてしまう。

あと3kmも登りが続くのでそれを耐えきる力も残さないといけない。

「1回しか引けなくて申し訳ないが交代!」と思って先頭を交代する。

交代して知ったが、自分の後ろにはグレガとクネゴだけで他のメンバーは1回引いて集団内に下がっていた。

自分も集団内に飲み込まれる。

グレガを先頭に集団が縦に伸び10番手辺りから2列ぐらいになって登っていく。

自分は集団内をドンドン下がって行く。

大切なことは1人にならないこと。

前を引いていたとはいえ登りでは後ろも先頭と同じくらい苦しい。

後ろで苦しんでいるスプリンター達がグルペットを形成するはずである。

今日はスプリンター向けのステージなので千切れたスプリンター達は前に追いつく為に全力で追いかける。

そこに便乗すれば集団に帰ることが出来る。

集団内を下がって行くうちにいつも遅れるスプリンター達を発見する。

この選手達と一緒に居れば大丈夫。

それ以上遅れないようにそこで粘る。

案の定しばらくして近くに居た選手がユックリではあるが一斉に集団から遅れだす。

グルペット形成。

後はここから千切れないように粘るのみ。

だが、前を引いていたダメージも有り相当キツイ。

ここは明日以降の事を考えて足を残す場面では無い。

無理してでも、限界を超えてでも残らなければいけない場面である。

「調子が良いだろう!まだまだ行けるだろ!周りを見て見ろ自分以外の選手もキツそうだぞ!あいつらは前を引いても無いのにキツイんだぞ!前を引いていた分俺の方が強いぞ!酸素を取り入れろ!血液に酸素を回せ!そして足を回せ!頑張れ!回せ!頑張れ!回せ!」

心の中で松岡修造並みに熱く自分にエールを送って頑張る。

最初は頑張っていたグルペット集団も徐々に元気を失い、前から離れる速度が速くなっていく。

それにつれて徐々に自分も楽になっていく。

心拍数もピークの頃より下がりだしている。

山頂までラスト1kmの看板を過ぎる。

そのころには相当回復し、集団前方から遅れてくる選手を逆に抜き始める。

徐々に位置を上げて行くとグレガと並ぶ。

グレガが「俺の後ろに付いていればいい」と言ってくれる。

「よろしくお願いします!」という気持ちでそこからはグレガに付いて行く。

山岳ポイントを過ぎ若干下って平坦区間に入る

今日は山頂通過後もしばらく平坦基調の登り区間が続く。

集団先頭の先を見るとトップの集団は遥か彼方。

そこからブチブチと千切れた小さな集団が1列になって先頭を追いかけている。

前にある集団を吸収することでより大人数のグルペットにしようと、全力で前を追いかけ始める。

NIPPOは「絶対に前に追いつかなければいけない」という立場ではないので集団後方で各自がバラバラの位置で付いて行く。

横風で集団が道路の右端に寄せられながら全力で爆走。

前の選手に必死で食らいついて行く。

身長が小さいおかげで受ける風が少なくて済む。

今日はホイールをBORA50にしてもらっていたおかげで高速域でより楽に走ることが出来る。

もう一つの選択肢としてはBORA35だが、自分の感覚としてはBORA50は巡行性能が良く高速域で力を発揮し、BORA35は踏み出しの反応が良く登りが軽いという感じ。

今日のような平坦基調?のコースではBORA50が適していると読んだ。

グルペットの集団が徐々に大きくなっていくが、それでもトップのグループはかなり遠いままレースが進む。

41kmから始まる下りに入る。

トップのグループを追いかけているためかなり速いが、広く真っ直ぐな下りの為安全に下ることが出来る。

余裕が出来たので片手を離して背中のポケットからライスケーキを取り出して食べる。

自分の横では両手をハンドルから離してウィンドブレイカーを着ている選手も居る。

ちなみに時速は70km越えの状態。

たいがい頭のおかしなスポーツである。

最終的に下り切って結構進んだ60km地点で集団が1つにまとまる。

その後ペースが落ちたことで休みながら走ることが出来た。

休んでいる最中にクネゴに「調子はいい?」と聞くと「疲れている」と言っていた。

山岳ポイントがどうだったかは答えが聞くのが怖くて聞けなかったが集団トップを通過していたらしい。

休みながら「次の登りは……たしか70km地点からか」と思ってメーターを確認する。

73km地点。

既に始まっていた。

そこから徐々に勾配がキツクなっていったがそこまで苦しむことなく乗り切れた。

そこから下りに入る15kmかけて500m下る。

雨が降っていたこともありかなり寒い。

めったに使わない長袖のウィンドブレーカーを着ていたにも関わらず下り切った時には震えるぐらい体が冷えていた。

体温を上げる為に何か食べようと背中のポケットに手を入れるが。

上手く取り出せず手こずっていると隣を抜いて来たFDJのイグナタス・コノヴァロヴァスに「寒いか?」と聞かれたので「イエス」と答えておいた。

そこからは何事も無く休みながら走る。

ラスト60km地点でグロスがトイレに行きたいという事で一緒に止まって終わるのを待つ。

そこから一緒にスタートし自分が先頭で集団を追いかける。

今日は集団スプリントになる可能性が高いので、スプリンターのグロスを不必要な所で疲れさせてはいけない。

下り基調の道をチームカーの間を上手く抜けていき無事集団に復帰することの成功。

グロスが集団内を上がって行くのを確認して集団後方で再び休憩。

「今日は最後に4級山岳があるがどうするべきか?自分的に頑張らずにグルペットで帰りたいがスプリントステージという事でグルペットが出来ない可能性が高いし、出来ても集団に復帰する為に高速だろう。流して1人で帰って来るという手もあるが、50kmを1人で帰るというのは30分の猶予があるとはいえ結構怖い……わがまま言わずに集団に頑張って付いて行くか」いろいろ考えた結果そういう結論になった。

そして4級山岳が始まる。

最初はユックリ目のペースだったが徐々にペースが上がって行く。

遅れ始めている選手もいるが少数。

グレガも集団後方に残っているし千切れるかどうするべきか……。

悩んでいる間にラスト2kmの看板を過ぎる。

「こうなれば頂上まで頑張ろうかな!」そう腹を括った瞬間に前方で集団が分裂しグルペット形成。

グルペットはトップ集団が見えるぐらいの位置で登りきり下りに入る。

自分達のグルペットにキッテルが居るらしく、クイックステップがグルペットの先頭で全力のローテーションをして前を追いかける。

本日2回目の高速グルペット。

クイックステップのおかげで集団に復帰することが出来た。

集団も逃げを捕まえる為に高速で進む。

若干の横風も手伝い、後ろでもかなりキツイ。

千切れたい気もするが、あとは平坦のみなので付いている方が楽な気もする。

集団の最後尾で苦しみつつ千切れるか悩んでいると集団のペースが落ちる。

そこでグレガから「残りの距離も少ないし無理せずに千切れればいい」と言われる。

その後ラスト10kmから再びペースが上がりその瞬間に付いて行かずに千切れる。

自分が千切れてすぐに自分の前に居た10名程も踏むのを止めて集団から遅れる。

その集団にグレガとジリオーリがいたので追いついて一緒にユックリ走ってゴールした。

 

 

感想

 

予想を裏切らないしんどい1日だった。

一昨日の事もあり身構えていたのでそこまで衝撃は無かった。

レースがキツくなるかどうかは選手次第といったところだろう。

そもそも今日のレースがしんどかったのは最初の2級山岳で踏んだのが原因な気もするが。

もっと言えば集団が分断したこと自体、NIPPOが原因を作ったような気もするが。

山岳リーダージャージは昨日の時点で2位だったLOTTOのティム・ウィレンスが1点差でクネゴを上回りジャージを手放すことになった。

ちなみに今日の獲得標高は2400m……平坦ステージとは一体?

レースレポートの最初の部分でも少し触れたが明日は逃げたい。

明後日にはタイムトライアルが控えているため逃げ切りの可能性も高いからである。

逃げたいと言って簡単に逃げれるものでは無いというのは百も承知であるが、明日は逃げる為に全力で努力したいと思う。

 

 

キツさレベル

横風、雨、寒さ、そして登りといろんな意味でしんどい1日だった。

しっかりと休んで回復させて明日に備えたい。

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COMMENTS

15 Comments
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はぴまり  

さすがのGiro平坦ステージ(笑)ですね!
時に熱く、時に冷静な判断で、きちんとシゴトをするって、ホント尊敬します。
チーム模様もおもしろくて、サボリ前提の信頼関係(笑)とか、グレガ先生の気くばり感とか個々の選手のタイプがうかがえて、チームNippoが好きになりました!
本日もうまく逃げられるよう、無事完走できるよう、応援してます。

2016/05/14 (Sat) 20:18 | EDIT | REPLY |   

自転車走業  

元喜さんのブログめちゃくちゃ面白いです。そしてめちゃくちゃ応援してます。あなたの活動から本当にたくさんのものをもらっています。ありがとうございます。

2016/05/14 (Sat) 18:52 | EDIT | REPLY |   

sarmiento  

よっしゃー逃げろー
テレビの前で応援してるぞー!

2016/05/14 (Sat) 17:17 | EDIT | REPLY |   

taca  

ジロ出場選手でこれほど詳細な情報を提供してもらい感謝しています。
ブログを読むたび自分が走っているような感覚になっています。
もう少しで休息日です。
今日の第8ステージも期待しています。
皆もTVの前で一緒に走っていると思いますよ。
FORZA!
GENKI!

2016/05/14 (Sat) 17:00 | EDIT | REPLY |   

なかた  

毎日お疲れ様です。
集団内での様子や、選手とのやり取りを、毎日興味深く拝読しています。
本当に大変な事が、とても伝わってきます。
最後まで怪我などせず、無事に完走してください。
頑張って下さい。

2016/05/14 (Sat) 15:11 | EDIT | REPLY |   

pinna  

Genki目線のジロ デ イタリアは超面白い、最高です。テレビで観戦するだけでは分からない色んなことがあるんですね。
毎日、山本選手を応援しています!

2016/05/14 (Sat) 14:07 | EDIT | REPLY |   

ねこまんま  

今回初めて、テレビでの自転車競技観戦。よくわからない事だらけでしたが、ブログ拝見して、レースの裏で行われているやりとりがわかり、楽しみ方が分かりました!
毎晩テレビ観戦。その後に、ブログ拝見。とても楽しくハマりました。
明日の逃げに乗れたら大興奮です。
ともあれ、一番は完走を期待しています。毎日とても楽しく見ています、ありがとう。

2016/05/14 (Sat) 12:36 | EDIT | REPLY |   

-  

ステキ とっても

2016/05/14 (Sat) 11:33 | EDIT | REPLY |   

Aママ  

1日目から拝見してます!毎日応援してます!
元喜さんのクレバーなレポートで
毎日のグランツールの楽しみが倍増です
プロトンの様子(チームNIPPOも)がうかがい知れて
いつも想像(妄想)してることがリアルで感激です
(フィロージウォッチングがちょっとクセになる楽しさ・・)
本日Jスポ放送開始、逃げが決まっていたら!!
いつものようにクレバーにチャレンジしてください楽しみです

2016/05/14 (Sat) 10:31 | EDIT | REPLY |   

ひろべ  

元気、気合いだ~!気合いだ~!気合いだ~!。
でも落車はしないでね。[E:#x1F49B]
期待はするけど、明日の逃げにはこだわらないように。
あくまでも目指すものは完走だ。まだ先は長い!。

2016/05/14 (Sat) 10:30 | EDIT | REPLY |   

西澤  

お疲れさまです。
信じられないことがたくさんあるサイクルロードレースの世界を詳細に伝えていただき、とても興味深く読んでいます。
・特に、70mで手放し運転って、ほんととんでもない世界です。
・だいたい、3週間も毎日200㎞前後を全力で走りぬく体力が普通じゃない。
(こちらは50歳代で、100kmはしると、1週間ぐらい休みたくなるレベルです)
・朝の心拍は計ったことないのですが、結構ばらつきがあるもんだとおもいました。前日のレースの影響か、なにか食べたものの影響か、睡眠時間の問題か、はたまたなにかレース中の夢でもみて、心拍が少し上がったのか。と想像しています。
今日の逃げに期待です。

2016/05/14 (Sat) 10:18 | EDIT | REPLY |   

なか  

逃げ期待してますよ!

2016/05/14 (Sat) 07:30 | EDIT | REPLY |   

cervo  

こんばんは!
連日のレースにも関わらず、素敵なブログをありがとうございます。毎日giroの様子をチェックして、応援しています。
タイムトライアルの日には現地に応援に行く予定です。
気候が安定しませんが、身体に気をつけて頑張ってください!
FORZA!

2016/05/14 (Sat) 06:50 | EDIT | REPLY |   

かちゅうしゃ  

いつも楽しくブログを拝見しています。
逃げ決めて下さい。
テレビの前でメチャ応援してます。

2016/05/14 (Sat) 06:47 | EDIT | REPLY |   

はしもと  

『平坦ステージとは一体?』
さすがジロ・デ・イタリアですね。
そして、いつもテレビに移らない場面で何が起こっていたのか詳細に書かれていて、とても面白いです。
録画したレースをもう一度見ると、また違った見方ができます。
これからも頑張ってください!応援しています。

2016/05/14 (Sat) 05:58 | EDIT | REPLY |   

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