ブリュッセル・サイクリング・クラシック
ブリュッセル・サイクリング・クラシック
クラス:HCクラス ワンデーレース
開催国:ベルギー
日程:9月3日
距離:199.3km
天候:曇り時々小雨
出場チームメイト:グレガ・ボーレ、ダミアーノ・クネゴ、イゥーリ・フィロージ、エドワード・グロス、ニコラス・マリーニ、アントニオ・ニーバリ、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
ブリュッセル近郊で行われたアップダウンを繰り返すレース。
レース前のミーティング
今日は去年のこのレースで上位に入っているグロスをメインに、マリーニとグレガを含めた3人でゴールスプリントを狙うという作戦。
残りのメンバーは逃げを狙ったり、指示に従ってアシスト出来るところでは動くという感じ。
レースレポート
10分ほど前にスタートラインに並びに行く。
10分前ということもあり、まだ他のチームプレゼンテーションがサインボードで行われている。
ちょうどクイックステップのプレゼンが行われている。
会場に「マルセーィル・キッテル!」というプレゼンターの声が響いている。
横にいたグロスに「キッテルが来てるんだ?」と確認すると、「キッテルが来てるけど、俺が1位でキッテルが2位」と言っていた。
キッテルが来てるのか……。
下らないことは考えないようにしてレースに頭を切り替える。
今日のレースはアップダウンが連続するが最終的にはゴールスプリントになるであろうレース。
ブエルタの裏レースとはいえ、キッテルが来ているように各チームエーススプリンターを連れてきているはず。
そうなればゴールスプリントのアシスト要因もかなり充実したメンバーがいるはず。
逃げを追走する選手は余るほどいるはずなので逃げ切りの可能性は低い。
だが逆に考えればそれだけ追走の人数が揃っているということは多少多めの人数でも逃げが決まる可能性が高い。
それに、どうせ逃げが決まるならさっさと決めてしまおうとなり、早く逃げが決まる可能性もある。
最初からアタックに反応できるようにできる限り前に並ぶ。
ピストルの発砲音っぽい単発の号砲でパレード開始。
横でクネゴが「誰か撃ち殺されたか?」と言っていた。
パレード中に頑張って集団先頭に上がる。
0kmを通過しレースが始まる。
2車線の沿道の木が高く伸びて上で繋がった緑のトンネルのような道でアタック合戦が始まる。
あまり激しくない。
静かな感じでアタックがかかっては捕まる。
自分も飛び出してみるがイマイチ。
高地でトレーニングしていたこともあり息は上がるがすぐに回復する。
何度か仕掛けてみるが決まらない。
自分の経験的に今回のアタック合戦は長引きそう。
「どうせ最終的にゴールスプリントになるなら逃がしてくれよ」という選手が多すぎて逃げが決まらないパターン。
それにワールドツアーチームも飛び出しに選手を送り込んでいる。
各チームがスプリンターを揃えている以上、自チームの選手を逃げに送り込むことで先頭のローテーションに加わらなくてよくなる、というのはゴールスプリントに向けてのアシストを温存するという面でかなり有利に働く。
当然それを阻止するための潰し合いも発生するわけで、そうなると余計に決まりにくくなる。
キツメの短い上りで集団内に飲み込まれたことでアタック合戦に参加するのをやめる。
長引くなら無理に前で動き続けた分だけ無駄足になる。
それなら集団内で様子を見て、楽に前に上がれそうなタイミングで先頭に出て逃げに挑戦する方がいい。
そんなことを思っているとアップダウンが連続し始める。
逃げが決まらないことによりアップダウンで延々とアタックが繰り返され、集団がそれに引っ張られて高速で進む。
かなりキツイ。
余裕があれば前に上がるとか格好つけてる場合じゃない。
千切れないように全力で付いて行くので精一杯。
今まで苦しんできた数々のベルギーでのレースがフラッシュバック。
「……あぁ、ベルギーってこんな感じでしたよね……」と思いながら集団中盤から後方で苦しみ続ける。
もう、逃げとかどうでもいいからさっさと決まってペースが落ちてくれ……。
そんな願いも届かずアタック合戦が続いたままレースが進む。
40km過ぎで道が広くなり前に上がるチャンスができる。
逃げは決まっていない。
皆さんお疲れの様子でアタックにもキレがない。
チャンスと思い急いで前に上がる。
あと少しで先頭、というタイミングでアタックがかかり「アタック合戦終りょ~う」という声が上がる。
が、無視されてアタックが続く。
そろそろ逃げが決まりそう。
先頭に出て他の選手のアタックに付いて行く。
2回ほど行ってみたが決めれず。
それまでアップダウンで苦しんでいたこともあり集団に飲み込まれる。
今日は無理だ。
その後、50km過ぎで逃げが決まる。
上りで飛び出した8人くらいが逃げを形成したらしく、もし自分がその場にいても加われていなかっただろう。
そこからは集団内で休みながら走る。
両サイドに収穫の終わった麦畑の広がる田舎道や小さな町の中を繰り返し通過する。
田舎道は道が悪いこともあれば急な下りでブラインドコーナーが現れることもある。
小さな町の中は路面が石畳とまでは言わないがレンガが敷き詰めてあるような道も多いし道幅も狭いうえにロータリーも現れる。
休みながら走るとは言うが、様々な要因で集団が伸び縮みを繰り返し、落ち着いて走ることはなかなか難しい。
比較的前方に位置取っているマリーニのそばで走るがそれでも地味に疲れる。
無線から逃げとのタイム差の情報が何度か入ってくるが3分を超えることは無い。
逃げが潰されるのは確定的だろう。
自分のボトルの水が切れたので無線で連絡してから集団後方に下がりチームカーを呼ぶ。
チームカーがやってきたので、下がる際に他のチームメイトから預けられた上着やアームウォーマーを渡して水を受け取る。
背中に7本のボトルを詰め込んで集団に戻る。
その後90km過ぎの補給所でサコッシュの受け取りに失敗したのでしばらくしてペースが落ち着いたところで再びチームカーまで下がる。
同じく受け取りを失敗したマリーニとフィロージに頼まれたコーラを余分に受け取って集団に戻る。
フィロージにコーラを渡してマリーニにボトルとその他諸々を受け渡してから再びマリーニのそばで地味に足を削られながら待機。
しばらくして他のメンバーも前方に上がってくる。
逃げとのタイム差が1分半ほどになってきたこともあり集団前方の密度も上がってくる。
無線からジリオーリに「前に出てローテーションに加われ」という指示が出る。
しばらくしてから自分も加われと言われて前に上がる。
ラスト60kmほどで集団の密度が上がっていることもあり中々前に上がれない。
緩めの上りで集団が縦に伸びたので、その横を一気に前まで上がる。
先頭まで上がったは良いが何か様子がおかしい。
集団先頭がどこかわからないほどに色々なチームが前に上がってきて並走している。
何だこれ?と思っているとジリオーリが横から現れたのでその後ろに入る。
しばらくジリオーリが粘っていたが平坦に入ったところで自分もろとも飲み込まれる。
他に先頭を引きたいチームがいるのであればわざわざ前に上がる必要がないので集団内に戻る。
そこから本格的にペースが上がる。
緩いアップダウンでペースが上がり集団後方で苦しむ。
上りの途中でとうとうベルギー名物『石畳』が始まる。
それまでにも短めの石畳は何度か現れていたが、今回のように長いのは初めて。
両サイドの溝の部分のみが石畳になっておらずそこに選手が逃げ込んで左右に2列になって走る。
その真ん中を逃げ遅れた間抜けな選手が走る。
当然自分も間抜けな選手側。
両サイドの溝の部分を走るのにもデメリットはある。
必然的に1列になって走る必要が出てくるので、前の選手が中切れを起こしても気づきにくいし気付けても差を埋めることが難しい。
両サイドで石畳区間を楽に突破できたと思っていても、いつの間にか集団から遅れておりそのまま復帰できずに終わるということもある。
石畳の道では一度速度が落ちてしまうと再加速はかなり困難。
低速度で石畳を走ると石を一つ一つ越えるように走ることになるため、進む力が上の方向の力に変換されてしまい速度が出ない。
逆に高速で走れば石に突っ込んで石の上を跳ねるように走ることが出来るので速度が落ちにくい。
その分衝撃は激しくなるしハンドリングも悪くなるのでかなり怖いが仕方が無い。
さらに石畳ではチェーンが跳ねてチェンリングから落ちてしまうことが多々ある。
そのリスクを少しでも減らすためにアウターにチェーンを入れる。
こうすることでチェーンが伸びてリアディレイラーに引っ張られるため落ちにくくなる。
一番引っ張られるのはアウターローの組み合わせだがそれではギア比が小さすぎるので何枚か落として調整する。
間違ってもインナートップなどは使ってはいけない。
ゴリゴリ踏んで石畳を突破。
結構足に来ている。
石畳で伸びた集団が縮まるために緩い下りを猛スピードで突っ込んでいく。
千切れてしまいたいが後ろに迷惑がかかるので我慢する。
下りきって緩やかな上りをハイペースで駆け上がる。
しばらくの間粘ったがジワジワと遅れていく。
上り切り、集団はハイペースで下っていく。
そこに追いつけるわけもなく完全に遅れる。
ここから走って帰るのかと思っていると後ろからクネゴがやってくる。
「一緒にローテーションするぞ」と言われてペースを落として流しながら走った。
その後前から遅れて来たニーバリとグロスに合流し、他の遅れた選手も吸収して最終的に10人ほどの集団でゴールまで走った。
途中で交通規制が解除されていたので薄々わかってはいたがDNFだった。
感想
久しぶりのヨーロッパのワンデーレースでこれがヨーロッパという感じだった。
ベルギーのレースに出場するのも久しぶりでベルギーってこういうレースだったなと思うことが何度もあった。
いつもであれば「2度とベルギーのレースは走りたくない」と思うくらいにボロボロになるが、今回はそうでもなかったのでそこまでベルギー色全開のコースではなかったと思う。
それでも短めの丘越えのアップダウンが連続するのはベルギーらしく、高低差100mの上りがほぼ無かったにも関わらず、獲得標高2000m越えはかなり上っていると感じた。
道の細さや下りのコーナー感じもベルギーらしく、「以前に走ったことがあるんじゃないか?」と勘違いするような箇所も何度かあった。
今回のレースでは急な上りの石畳が無かったためその点においては助かったと思っている。
高地トレーニングを積んでいたおかげもあり、回復能力は高くなっていると思う。
具体的には一度息が上がってしまってもすぐに息切れが収まる。
明日もレースがあるので頑張りたい。
キツさレベル
7
ジワジワと足には来ていたがそれが原因で遅れてしまったというわけではなかったので苦しみ続けて終わったという印象は薄かったのでそこまでキツイとは感じなかった気もする。
最終的に筋肉が耐え切れなくなり千切れたという感じだったので、千切れてから足の重さはあったが、疲労困憊という感じではなかった。
筋肉にはダメージが来ているのでしっかりほぐしておきたい。
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