ツール・ド・北海道 3日目
ツール・ド・北海道
クラス:2 ステージレース 3日目
開催国:日本
距離:195.8km
天候:雨
鷹栖町をスタートし札幌市でゴールする一本道のレース。
KOMが2つ設定されているものの今大会中で一番平坦なコースで登りはほとんどないと言える。
19.5kmに2級山岳が161.5kmに3級山岳が、57.5km地点に中間スプリントが設定されていた。
レース前のミーティング
スタキオッティがリーダージャージを持っているためそれを守り切れるように走るという指示。
行けそうであればベルラートの山岳ジャージ奪還を狙うが無理はしない。
状況に応じてコッリやチームカーに指示を聞いて動いて行くという感じ。
レースレポート
弱めではあるが雨が降っていたためスタートラインに並びに行ったのはレース開始2,3分前。
他のチームの選手も全員スタートライン手前の屋根のあるところで雨宿りしていた。
スタートラインに並びパレード開始。
左端から先頭に上がりベルラートとスタキオッティと並ぶ。
ベルラートに今日のパレードの距離を聞くと3kmと教えてくれた。
パレードが終わりレース開始。
アタックがかかるが、ベルラートが乗っていないものは積極的に潰して行く。
自分から先頭で潰すだけでなく、他の選手の後追いも利用して距離を詰める。
ここで相当追い込み、最高心拍221bpmを記録。
逃げが出来ないまま19.5kmにあるKOMへの登りへ。
登り入り口からアタックがかかる。
反応して潰してくが、このまま行くと逃げが決まらず集団のペースが上がって辛くなるだけだろうと思い、集団の先頭でペースをコントロールする方向にシフト。
後ろから追加でアタックがかかる。
人数が多すぎる場合には反応するが少数の場合には見送る。
山岳まで1kmの看板が出る。
スタキオッティが辛そうで「近くに居てくれ」と言われたので一緒に下がって行きながらKOM通過。
下り切り、平坦区間に入り逃げが7名で決まる。
集団が落ち着いたところでチームカーまで下がり状況の確認。
逃げている選手はほとんどがタイム差10秒台の選手で逃げ切られれば総合が逆転してしまうという状況。
ひとまずは、集団である程度タイム差が開くまで待ってそこからコントロール開始という感じ。
しばらくしてタイム差が10分近くまで開く。
ここからレースのコントロール開始。
一旦チームカーに戻り雨で濡れたレーンコートを交換。
ここから前を引くことで体温が上がることも考慮し薄手のジャケットを羽織り先頭に上がる。
コッリにどれくらいのタイム差をキープするのが良いか聞くと7分ぐらいという返事。
自分、ベルラート、フィロージの3人でのローテーションでペースを上げて追い出す。
40km地点。
いまいち差が詰まりにくい。
2回目に先頭に出たときにかなりペースを上げて詰めに行く。
ここから徐々に差が詰まっていく。
しばらくして8分差まで詰まる。
あと1分詰めておきたいが中々縮まらない。
むしろ気を抜くと差が広がってしまう。
後ろからコッリが、「先が長いから無理をしなくていい」と言ったので、一旦ペースダウン。
70km地点。
8分前後を維持しながら集団をコントロールする。
90km手前から緩やかな登りが始まったこともあり再びペースを上げていき差を詰めていく。
逃げからブラーゼンの雨澤とチャンピオンシステムの優が千切れて来て、逃げが5人になる。
が、差が縮んでいくペースが遅すぎる。
登りの途中でキナンの山岳ジャージのデリアックが先頭交代に加わる。
ラスト35kmにあるKOMまでに吸収するためだろうか?
今までズット3人で先頭を引いていたダメージのせいかフィロージが一旦下がる。
自分、ベルラート、デリアックでのローテーションが始まる。
しかし、差が全くと言っていいほど詰まっていかない。
残りは90km近く、タイム差は7分半ほど。
10km1分のペースで考えれば詰めるには十分なようではあるが、今までの詰まっていき方を考えるとかなり不安。
登り切り緩やかな下りに入る。
このくだりで昨日に引き続き右京の土井さんが先頭交代のローテンションに加わる。
全力で下りを踏みまくって前を追うが、詰まり方はやはり緩やか。
下り切ったところでラスト60km程。
ここでタイム差6分程。
10km毎に1分詰めないといけない状態。
今までコントロールしていたダメージもかなり蓄積している。
選手が逃げに乗っていないチームは何を考えているのだろうか?
ゴールスプリントに備えている?
そもそも追いつかなければゴールスプリントにすらならないわけだが?
下り切ってからの平坦区間でローテーションに右京の選手が追加で2人入る。
フィロージも復活し、7人でのローテーション。
人数が増えれば後ろで休む時間も長くなり、先頭に出たときに踏むことが出る。
結果として前を追うペースも上がる。
しかし差は劇的には詰まらない。
ラスト35kmの山岳ポイントへ向かう。
差は5分後半。
土井さんに残りの距離を聞かれて「残り40km程です」と答えると「かなり不味いな」と不安そう。
確かにかなり不味い状況。
気持ちは焦り一刻も早く詰めたいと思うが、その気持ちに応えられるだけの足が無い。
山岳ポイントを過ぎて下る。
ラスト35kmを切る。
タイム差5分半。
ここで状況を相当不味いと判断したのだろう、ブラーゼンの佐野さんが先頭交代に加わる。
しかし、ラスト25kmでタイム差5分。
絶望的なタイム差。
その後にこのままでは吸収できないと判断したコッリとスタキオッティもローテーションに加わる。
ローテーションにNIPPOは選手を全員動員。
たとえゴール勝負を捨てることになっても、何としても逃げをとらえる覚悟の態勢。
右京の窪木さんと共に日大、法政、明治大学の選手も2人ずつ上がって来てローテーション入る。
チャンピオンシステムも加わりかなりの人数でドンドン先頭を交代してグルグル回りながら前を追う。
そのおかげでバイクからのタイムボードが表示されるたびにタイム差が縮まっている。
しかし、ラスト15kmで3分。
逃げ集団が分裂しているようで1人と4人に分かれている。
恐らくアンカーの誰かが飛び出しているのだろう。
しかし、追いつける気がしない。
先頭で追いかけるのをやめてしまいたい。
そうすればもし、追いつけなくとも少しは責任逃れできるはず。
ゴールした時に「全力で追いかけて集団に付いて行けないぐらい足を使い切ってしまい千切れてしまった」とでも言えばそれっぽいだろう。
千切れたい。
全力で追い続けて結局追いつけないなんて言うのはダサすぎる。
そんな醜態はさらしたくない。
と心が折れそうになってしまう。
しかし、ここで千切れて責任を放棄するというのは許されることではないとも思う。
ここで諦めて誰に責められなかったとしても、自分で自分が許せないと思う。
前を追うアシストとしてのプライドの問題。
今日がキツクなるのは走る前から分かっていた事なのだから最後までやりきるしかない。
腹を括る。
最後まで絶対に諦めず何としても捕まえる。
ラスト10kmで2分半。
先頭と2分半であり、その後ろの4人とは2分程。
4人を捕まえれれば残り1人もすぐに捕えることが出来るだろう。
ここまでの差を詰めてきた側からすれば最早、目と鼻の先。
しかし追う側もグチャグチャ。
まるでアタックしているかのように引いているメンバーが集団から飛び出しては、集団が追いつきという状況を繰り返している。
原因はもう、前に出るだけの足を持っている選手がほとんどいないから。
限界の選手が交代のローテーションに入れず、「後ろに付いてくるだけ」の選手が前に出るのを嫌がって先頭のローテーションとの差が開く。
自分も限界でまともに前を引ける状態ではないが、集団が分裂することによるペースダウンは何としても避けなければいけない為前に出て繋ぐ。
足もほぼ使い切ってヘロヘロ。
しかし、ラスト5km。
とうとう前の4人が見える。
その先に1人飛び出しているのも見える。
これなら追いつける。
と考えローテーションから集団内にまで下がる。
自分の直後にベルラートも下がってくる。
先頭を見ると4人ほどでローテーションを回している。
その直後、バジェットが列車を組んで先頭に出る。
ゴールスプリントに向けて若干牽制している様子。
ここで牽制されてもし、逃げ切られでもすればたまった物じゃない。
今、この瞬間にでも前を捕まえたい。
限界を押して集団右側から再び前に上がっていく。
タイミングを同じくして、同じ判断をしたのであろうベルラートが、フィロージを連れて集団左を上がっていく。
先頭に近づく。
先頭付近で位置取りをしていたコッリとスタキオッティが「バイ!バイ!(行け!行け!)」と叫ぶ。
いつの間にか集団の先頭に出ていた大喜をパスして先頭に出て全力で引く。
後ろでコッリとスタキオッティが「バイ!バイ!バイ!バイ!」と叫んでいる。
全力で踏み切り、前との差を一気に詰めて先頭交代。
足を今度こそ完全に使い切って集団内に下がりながら、集団が逃げを吸収したことを確認。
ラスト2km。
そのまま集団内でゴールする。
ゴールではスタキオッティとコッリがまさかのワンツーを決めていた。
途中で先頭交代にも入り全力で前を追っていたにも関わらず。
最後のゴールもしっかり締めるところにエースとしての意地を見た。
感想
逃げたメンバーに予想以上に粘られたせいで本当に辛いレースだった。
何度も心が折れそうになったが、諦めずに追い続けて吸収することが出来たというのは自分の自信や経験としてかなり良かったと思う。
吸収しきった上にゴールスプリントでワンツーを取った時にはさすがに泣きそうになったが我慢した。
チームとしての成績もこれ以上無いという程に最高のものだったので一緒に頑張ったチームメイトに感謝したい。
本当に身心共に経験したことが無いレベルでの辛さだった。
しかし、つらい経験を積み重ね、それに耐えることで初めて力を付けることが出来る。
現に自分はヨーロッパで辛い経験を積み続けてきたおかげで、今まででは考えられないほどに力が付いていると感じる。
力が無いにも関わらず「後ろに付いているだけ」や、「ゴール前のみで勝負する為に後ろで足を溜める」という事をしているようでは、「上手く走る技術」を身に着けることは出来るが、「根本的な力の向上」というものは一向に望めない。
「上手く走る技術」を身に着けることが出来れば、そのレベルではある程度活躍することが出来るかもしれないが、レースのレベルが少しでも上がれば千切れて終わる。
それではヨーロッパで活躍や勝負することを目指すことは到底できない。
「根本的な力の向上」を積み重ね続けることで初めてヨーロッパで勝負することが出来る。
偉そうなことを書いてはいるが、自分の力もヨーロッパで活躍するにまだはまだ足りない。
しかし、自分は今回のレースでさらに力を付けることが出来、ヨーロッパで活躍するという目標に対し、小さくはあるが一歩近づいたと感じた。
これからも目標に対して一生懸命努力を重ねていきたいと思う。
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