ジロ・デ・イタリア 5日目
ジロ・デ・イタリア 5日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月11日
距離:233.0km
天候:晴れ
起床時体重:60.5
起床時心拍:49
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、イウリ・フィロージ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
今日の自分への指示はジュリアーニから一言「トランクイーロ(ユックリ)。
レースレポート
自分だけ少し遅れてスタートラインに並びに行くと、NIPPOの選手が最前列を陣取っていた。
「クネゴがジャージを持ってるから前方に固まっているのかな」と思い自分もその側に並ぶ。
パレード開始。
今日のパレードは2kmと少しと短め。
「ユックリという指示だし前に居なくていいかな」と思い後ろに下がって行く。
パレードが終わりレース開始。
アタックしている選手が見えたが少しして集団が一定のペースになる。
「逃げが決まった感じでは無いな」と思いつつ、だいたいどういう感じか想像は付いていたが集団前方を見て見る。
オレンジ色のジャージが集団の先頭に居る。
「やっぱりね!」と思い急いで集団の先頭まで上がる。
クネゴ以外の選手が集団の先頭でローテーションしている。
ジリオーリに「逃げは行っているのか?」と聞くと「逃げは決まっていない」と教えてくれる。
なるほど、山岳ポイントまで集団をコントロールすることで逃げを決めさせず、クネゴが山岳ポイントを1位通過することで今日もジャージをキープするという事だな。
と理解する。
今日は意図がハッキリしているし、かなり意味のある仕事になる。
ローテーションに入るとボーレの指示でローテーションに入る選手がセレクションされていく。
グロスは昨日に逃げているし今日は集団スプリントの可能性が高いという事もあるのだろう、回らなくていいと言われる。
ジリオーリとビソルティも回らなくていいと言われる。
結果的に自分、スタキオッティ、フィロージ、ベルラートの若手軍団とボーレ。
ボーレがなんとなく先生っぽい感じ。
ボーレは見た目がかなり、かなり厳ついが頼りになるし指示も的確。
グレガ・ボーレ先生。
ペースはそこまで上げずある程度という感じで先頭を長めに引いて交代していく。
フィロージが先頭に出る。
結構早くに交代する。
自分の後ろからスタキオッティーが「おい!もっと引け!」と怒る。
しょうがなくという感じでフィロージが再び先頭で牽引を続ける。
その後ローテーションをしばらく続ける。
他のチームもNIPPOが山岳ポイントまで集団をコントロールすると分かっているようでアタックは一切してこない。
そのまま25km地点まで行きラスト10km。
後ろから他のチームが後ろから上がって来てNIPPOの列車の少し後ろに並んでくる。
先頭に出ると左右の後ろから他のチームが上がって来ている気配をすごく感じ、プレッシャーが凄い。
そのせいで気が付かない内に踏み過ぎていたようで後ろのスタキオッティから「踏み過ぎている」と指摘される。
その後少しの平坦と下りを挟む。
その間もペースをかなり上げることでNIPPOが集団先頭を死守。
下りの途中で左に曲がり山岳ポイントまでラスト2kmの看板を通過。
ベルラートが先頭で自分が2番手で曲がったのだが自分がコーナリングに失敗しグレガ(ボーレ)が自分のインから前に出た。
一瞬グレガが飛び出したような状態になり、すぐに後ろからジリオーリとビソルティのクライマー2人がクネゴを後ろに付けてグレガに追いつく。
そしてそのまま山岳ポイントに向けて発射。
自分の仕事は終了でペースを落として登る。
山岳ポイントを狙っている選手を先頭にした集団が勢いよう自分を抜いて行く。
集団の先頭はグレガを先頭にNIPPOが4人いて少し開いて数名の集団が追いかける状態。
その後ろに若干バラけつつも集団が続いて行く。
その後、無事にクネゴが山岳ポイントを1位で通過。
さすがクネゴ、決めるときはかなり格好良く決める。
自分はイーブンペースで登り出し、いずれ来るであろう「登りはどうでもいいから、下りで追いつきたい選手が固まっている集団」を待つ。
山頂までラスト500m辺りのころでそういう雰囲気の集団に合流し下りに入る。
下りがかなり速い。
しかし、昨日下りで千切れた事を反省して、2回目の山岳ポイントの後の下りで練習して根性を叩き直したこともあり付いて行ける。
「前がスリップしない限りは自分がスリップすることは無い」精神で前の選手に全力で付いて行く。
そのおかげで下りの途中で逃げが決まってペースが落ちたメイン集団に追いついた。
そこからは集団の中盤辺りで場所をキープしながら進む。
「今日のレースは距離が長いけどここより後に山岳ポイントは無かったはず。登りが有っても緩めだろうし楽勝かな?仕事もしたし、クネゴは1位通過したし良い1日だ」と思いながら平坦区間を走る。
途中でグレガから「捕食は食べているか?今日は長いからしっかり食べろよ!でも食べ過ぎるな。今日は俺と一緒に居ろ」と言われる。
「レースの後半で千切れてグルペットに入るのか?」と聞くと「様子を見ながらだな、今の様にユックリであれば付いて行くし、ペースが上がってキツ過ぎれば離れる。あと、落車で集団が止まっても無理に追いつかず遅れる。レースはまだまだ長いから前半の期間は無理せず疲れを溜めないようにして後半に備える。俺は最終週で勝負する」と言ってくれる。
そこからはグレガと一緒に走る。
途中でグロスから「調子は?」と聞かれ「まぁまぁ良い」と答えると「俺は良くない、足がクソッたれだ」と言っていたので「今日はスプリントするのか?」と聞く。
「出きればするが……」と微妙な感じ。
昨日の芋掘り(逃げを追いかけてアタックするも追いつてずに宙ぶらりんの状態になる事)が相当効いているのだろう。
その後、異変が起き始めるのは補給ポイントを過ぎた100km過ぎの辺りから。
ちなみに補給は無事に受け取った。
思っていたより結構登る。
ペースは速くないが地味に足に来る。
「これ以上ペースが上がると不味いな、でもまだまだ距離があるし遅れる訳にはいかない」と思っていると登りが終わる。
下りに入りかなり速いペースで進んで行ったが今回も無事に付いて行けた。
下りの途中で集中し過ぎて変な顔になっている事に気付く。
唇がとんがって付き出している。
頭に青いバンダナを巻いたお祭りとかで売っている仮面を思い出すが名前が浮かばない。
しばらくかなり悩んだが結局名前が分からず諦める。
下り切ってから「なんかヤバいぞ……結構キツイ」と思ってグレガに「調子はどう?」と聞くと「俺は死んでいる」と笑いながら答えてくれる。
笑ってはいるがかなりキツいのだろう。
自分だけがキツイわけではないと分かり安心するが、キツイことには変わりが無く中々マズイ。
137kmからの登りが始まる。
2車線の高速道路のような道で延々と地味に登り続ける。
キツイ。
速くは無いが確実に疲れるペースで登り続け足にダメージが溜まり続ける。
千切れはしないけど千切れたい、前半にローテーションした疲労が今になって効いて来ている。
そう思いながら苦しんでいるとスタキオッティがほぼ最後尾の自分の横を下がって行く。
耐えきれなかったようだ。
しばらくして無線から「スタキオっ頑張れ!そこにいれば大丈夫だ!速くない!登りをそこで越えれば集団に戻れるぞ!」というジュリアーニの応援が聞こえてくる。
そこがどこかは分からないが後ろに遅れている集団があるようだ。
自分はまだ耐えれる状態だったのでそのまま耐え続けると登りが終わって平坦区間に入る。ジリオーリがBMCの選手からコースの高低表を見せてもらっていたので自分も頼んで見せてもらう。
179km、そこを越えれば下りに入る。
現在154kmであと25km。
30分辺りだろうか?それだけ耐えれば下りに入るし、もし千切れたとしても確実に完走できる。
まずはそこを目標に頑張ることにする。
その後の軽い登りでボトルを貰うために無線でチームカーを呼ぶ。
「今は登っているから少し待て」という指示が出る。
すると横に居たグレガが「何が欲しいんだ?俺が取って来てやる」と言い、無線でチームカーに「俺が下がるから上がって来てくれ」と言って他の選手の欲しい物のオーダーも聞いてチームカーに取りに行ってくれた。
その登りを越えて166kmから始まる登りへ。
無線からも「これが最後登りだから頑張れ」という指示が出る。
この登りが終われば後は平坦と下りしかない。
もしここで千切れるとグルペットで下りと平坦区間を走ることになる。
しかし、今日はスプリンター向きの平坦ゴール。
グルペットに入ったスプリンター達はゴールスプリントをするために何としても集団に追いつこうとするだろう。
そうなれば爆速で下るに違いない。
ハッキリ言ってそこに付いて行く自信はまだない。
という事はここでもしグルペットが出来てそこに入ってしまうと下りで確実に千切れて1人になってしまう可能性が高い。
登りの終わりは170km過ぎだが、ゴールまでは更に50kmもある。
1人で50kmはゴールできるか微妙。
多少無理してでも集団に残った方が賢明。
少しでもアドバンテージを持って登る為に集団がユックリ登っている間に一気に集団の先頭近くまで上がって登る。
千切れても大丈夫という余裕がある場合は集団後方で登っても良いが千切れたら不味い場合は少しでも前で登りだした方が良い。
集団の先頭がかなり近い位置で登り出しそのままの位置をキープして登り続けた。
幸いな事にここでは集団のペースがそこまで上がらなかった為に比較的楽に登りきることが出来た。
その後1回軽く登ってから下りに入る。
ゴールまで50kmを切って来たという事もありかなり速い。
コーナーも連続し難易度で言えば今日で1番。
前から遅れないことだけに集中し全力で下る。
集団に付いたまま下ることに成功!
「下りのテクニックを身に付けた!」と思って集団の前方を見ると人数がかなり減っている。
「たしか集団の結構な後方から下り出したはずなのに……」と思って目を凝らすと遠くにもう1つ集団があるのが見えた。
下りで集団が分裂していた。
自分達の集団にも相当な人数がおり、前に追いつかなければいけない選手が全力で追いかけてくれたおかげで前に追いつくことができ、集団が一つになる。
ラスト35kmのゲートを越える。
無線から逃げとのタイム差の情報が入って来る。
1分を切っている。
今日は集団スプリントだろう。
そこから若干のアップダウンを含む平坦区間を集団が高速で進む。
道が細いこともあり棒状1列。
集団の最後尾でグレガの後ろに付いて走る。
ボトルの水を飲んでいるとラスト25kmのゲートが現れる。
ゲートを過ぎる際に集団にブレーキがかかり、自分もボトルを加えたまま急いでブレーキする。
「ヒョットコ!」ここで変な仮面の名前をいきなり思い出した。
その後20kmを過ぎる。
グレガの後ろで千切れるタイミングを待つだけかな?と思っていると無線から「前に上がれ」という指示が出る。
「マジで!?」と思いながらクネゴの側まで前に上がる。
クネゴに「側にいればいいか?」と聞くと「ここで良い」という事でそのまま走る。
集団はペースを上げてラスト10kmを過ぎる。
ここから3km先で1度ゴールを通過し、その後もう1度ここを通ってゴールする。
ここまで来れば千切れても良いが付いて行けるなら付いて行けばいいだろう、無理は禁物だが。
集団に付いて行くと石畳が現れる。
1回目の石畳を耐え、ゴール地点前の石畳で10人ほど前の選手が集団に付いて行けず遅れる。
それを抜かして集団に追いつこうと頑張る選手もいたが自分は「もういい」と無理をせずにその遅れた集団でゴールした。
感想
イタリアに来てからかなり調子が上がって来ている。
調子が上がってはいるがレースはまだまだ続くので調子に乗らないように、無理しないように気を付けながら走るようにしたい。
調子がいい時ほど注意深くなる必要がある。
前半はクネゴの山岳ポイントの為にローテーションで集団をコントロールしたが、かなりいい経験になった。
あまりそういう経験は出来ないので今日の経験は大切にしたい。
レースが終わってからFDJの選手に「良いレースだったか?」と嫌味でなく普通に聞かれ、「1回目の山岳が終わってからはもっと平坦なコースだと思っていた」と話した。
アルノー・デマールだった。
キツさレベル
8
かなりキツかった。
しかし出し切った訳ではないのでまだ頑張れる。
千切れたいけど千切れられないという微妙なしんどさに苦しみ続けた日だった。
今日のコースは平坦コースという分類だったにもかかわらず、獲得標高は3000m近かった、とんだ詐欺である。
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