ジロ・デ・イタリア 6日目
ジロ・デ・イタリア 6日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月12日
距離:157km
天候:曇り後雨、そして晴れ
起床時体重:60.7
起床時心拍:40
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、イウリ・フィロージ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
今日の自分へは昨日と同じくユックリ。
グレガの側で走っていればいいという指示。
レースレポート
今日のコースはジロ・デ・イタリアのコースマップを確認した際に始めの山場になると予想した重要なステージ。
まずはここをクリアしないことには当然ながら明日は無い。
明日は来るけど暗い明日がやって来る。
後ろ向きではあるがレース前から打ち切りの割合を確認しておく。
今日はトップから10%遅れれば打ち切られる。
レースのトップタイムは4時間は切らないハズなので160分の10%で16分。
かなりシビアなタイム設定。
ラスト20kmの登りが始まるところまで粘れないと完走は厳しい。
クネゴの山岳リーダージャージをキープする必要もあるので今日も集団前方に並ぶ。
果たして今日はゆっくり走れるのだろうか?
パレードが始まり平坦基調な道に入りレーススタート。
開始直後からアタック合戦が開始。
自分としてはクネゴが逃げに入ってくれればそれが一番楽で良いのだが……。
流石に逃がしてもらえないだろう。
最初のアタックにベルラートが入る。
3人が先行を開始する。
無線でベルラートに「先頭交代に加わるな」という指示が出る。
クネゴが入っていない逃げはNIPPOにとって必要ないという事だろう。
その逃げをグロスが追いかけて差を詰める。
自分は前に上がるのに失敗しており集団の中盤から様子を見ていたのだが、どのチームかは忘れたが「何やってんだよ」という感じで起こっているワールドツアーチームがいた。
逃げに選手を送り込んでいるのにそれを追いかけて潰しに行くというのは、やはり印象が悪いだろう。
最終的にある程度詰めたところでクネゴが集団から発射し逃げを追いかけ始めた。
しかし集団もそれを追い始め最初に逃げていたメンバーを含め全員が吸収される。
そのあたりのタイミングで自分も集団の先頭に上がる。
後ろにいるとサボっていると思われるし。
何度かアタックが繰り返されて吸収されてを繰り返す。
フィロージが全力でアタックに行っている姿も見かける……(作戦を理解しているのだろうか?)
そして最終的にビソルティの入った3人の逃げが決まる。
そこから無線で口論が始まる。
意味的には「今すぐローテーションを開始して追いかけ直して吸収するべきだ」というのに対して「ビソルティが入っているのに追いかけるのは良くない」という言い合い。
ちなみに前者がクネゴで後者が監督のジュリアーニ。
今日はジュリアーニが冷静。
クネゴがかなり焦ってしまっている。
「ちょっと落ち着け」など言える訳も無く事態が終息するのを待つ
最終的に「ビソルティが1番で通過すれば山岳リーダージャージがビソルティに移るだけだから問題ないし、クネゴが山岳を4位通過できればクネゴが山岳リーダージャージを守れるという事で落ち着いた。
今日もローテーションするのか?と事態を戦々恐々と見守っていただけに安心した。
無線での言い合いが落ち着くまで待っていたが、自分の変速の調子が悪いのでそれを無線で告げてチームカーまで下がる。
メカニックに状況を説明して後輪交換という事になる。
後輪を交換して再スタート。
集団のペースが落ちていたこともありすぐに集団に追いつく。
今朝の起床時心拍が40だった時点でだいたい予想がついていたが今日はかなり調子がいい。
かなり軽く登れている。
この登りのペースの感じだと今日は千切れる心配は無い。
それにもし自分が千切れるくらいにペースが上がったとしても自分より先にスプリンター達が大量に遅れるはずなので問題ない。
という事で集団最後尾で余裕を持って登る事にする。
逃げが決まっているので集団は延々と一定のペースを刻み続けて登る。
調子がかなりいいこともあり全く苦しむことなく付いて行ける。
そのまま登り続け山頂までラスト3kmの所から若干ペースが上がる。
少し踏んで付いて行き、ペースが若干落ちたタイミングで集団の中盤近くまで上がっておく。
こうしておけば次にペースが上がった際に遅れつつ登ることも出来る。
その後ラスト1.5kmを切ってから再びペースが上がる。
残りの距離が少ないこともありそのままの位置で付いて行く。
山頂付近で集団が縦に伸びたので更にポジションを前に上げる。
ここでポジションを上げたのは下りに向けてアドバンテージを稼ぐため。
そして下りに入る。
入ると同時に急に雨が降り出す。
路面が一気にウェットになる。
北イタリアと違い、ただでさえ路面状況の悪い南イタリア、そこに更に雨で路面が濡れるとなると相当危険。
「いつ滑るか分からない」というぐらいの危険度。
集団も棒状1列になって下ってはいるが全く速くない。
1列になっている理由は1番良いコーナーのライン取りが出来ないと滑る危険があるから。
車間もそれぞれがかなり開けて下っている。
自分も、普段であればバイクを倒しこんで下るところを、出来る限りバイクを立てて横方向に力がかからないように気を付けて下る。
全員が相当注意深く下ったためか落車は一度も発生していなかった。
自分は前の選手にしっかり付いて行って下っていたが、何人か前の選手が前から千切れており集団が分断されていた。
自分は前に付いて行くことは出来ても前との距離を詰める技術は無いし、出来たとしてもここで無理に突っ込んでいく必要は無いと判断する。
この下りは絶対に落車せずに下り切ることが重要だし、自分の後ろにはまだまだ選手が居る。
下り切ったところの平坦区間で後ろにいる選手達を利用して集団に追いつけばいい。
そう考え焦らずに確実に下っていく。
下りの勾配が緩くなりそろそろ平坦区間に入る兆しが見えてくる。
そのタイミングで4人ぐらいの選手に抜かされる。
これを利用しない手は無いと考え抜いてきた選手の後ろに付いて一緒に下っていく。
そのころには雨がやみ路面も乾き出していた。
予想通りすぐに下りの区間が終わり平坦区間に入る。
思っていたよりも集団から遅れておらず遠くない位置に大きな集団が見える。
上手く他の選手の後ろに付いて行きトップ集団に追いつくことに成功。
そのすぐ後にチームカーにボトルを貰いに行き5本受け取って集団に帰って来る。
そこから他のNIPPOの選手にボトルを渡そうとするがほとんどのメンバーが要らないと言う。
考えてみれば雨の降った下りを抜けた後で体も冷えているし喉が渇くわけも無いだろう。
思い返せば自分がチームカーにボトルを貰いに行った時も自分の分は貰わなかった。
背中にボトルを入れていても邪魔なだけなので押し付けるように他のメンバーにボトルを渡して捌いて行く。
しかし最終的にボトルが2本も余ってしまった。
しょうがないので1本は少し減っていた自分のボトルと交換して残りの1本は背中に入れたままにする。
誰が欲しいといった際に渡せばいいだろう。
しかしその直後に補給所がやって来る。
サコッシュを受け取ったがそこにもボトルが2本入っている。
現在手元にボトルが5本、本当に邪魔。
もっていてもしょうがないのでいらないボトル3本はボトルが欲しそうな観客に向けて転がすようにして投げる。
恐らく回収してくれるだろう、要らないボトルの有効活用である。
その後落ち着いた時点で距離と時間を確認すると、90km過ぎで2時間半以上経過していた。
現時点で15分遅れても大丈夫。
ちょっと待て、計算が合わない。
スタートの時点では16分しか遅れることが出来ないと計算していたはず。
よく考えてみると、なぜか1時間=40分で計算していた。
本当に謎である。
それほどまでにスタート前には気持ちが焦っていたのだろう。
計算し直せば少なくとも24分遅れても問題ないことになる事が分かる。
これであればラスト40km辺りから始まる坂で千切れてもゴールできるだろう。
集団の様子を見ながらではあるが無理に付いて行かなくても良いと思うとかなり気が楽になる。
昨日のレースの終盤に落車したジリオーリに「調子はどう?」と聞くと「痛い」と言っていた。
ジリオーリは左腕にタトゥーを入れている。
前に聞いた話だと軽い擦過傷であれば問題ないが、深い擦過傷であればタトゥーの模様も削げるらしい。
ジリオーリは昨日の落車で右腕はボロボロになっていたが左腕はほぼ無傷だったのでタトゥーは無事。
ちなみにグレガ先生は両腕を含む体のアチコチに自分の子供に関係するタトゥーを入れている。
グレガはアムステルゴールドレースでかなり派手に落車したが、顔面から落車したようでタトゥーは無事だったよう。
タトゥーをしている人間は落車の際に本能的にタトゥーを庇うのだろうか?
そしてラスト40km辺りからの登りが始まる。
昨日と同じような感じの広い道を同じような感じで登っていく。
めんどくさいな……早くグルペットが出来ないかな?と思いながら付いて行くが皆中々粘る。
千切れていく選手も居ないことは無いが少数。
グルペットを形成するには人数不足。
ペースは上がることなく一定で登り続ける。
途中で2回、集団の真ん中の中盤より後方の位置で落車が起きる。
両方ともバルディアーニが絡んでいた落車だった。
バルディアーニが原因かどうかは分からないが、無理して集団の中を位置取っているからふら付いたりして落車を起こす。
こけた側は自業自得だからいいが巻き込まれた側はいい迷惑だろう。
足止めを食らった側もいい迷惑である。
落車を起こすぐらいであれば集団の後ろで付いて行けばいい。
集団の後ろで付いて行けるか心配なぐらいしんどいのであれば残りの距離も少ないし、さっさと千切れればいい。
余裕が無いから必死になり過ぎて落車を起こすのだろう。
特にバルディアーニに関してはいつもうるさい。
少し前に入ったりしただけですぐに文句を言ってくる。
ワールドツアーチームはよっぽどでない限り文句を言うようなことは無い(無言の圧力はあるが……)。
チームのガラなのか余裕が無いからなのか知らないが、もう少し優雅に走って欲しいところである。
結局そこの登りでグルペットが出来ることは無く。
1度下って平坦を挟んだ後のラスト20kmを切ったところから始まる登りが始まった「瞬間」に大人数のグルペットが出来てそこでユックリ休みながらゴールした。
グルペットの雰囲気はかなりマッタリしていて、各選手が談笑しながら走り、ランプレのロベルト・フェラーリは登りの途中で「足が攣った!」とか言ってふざけていた。
山岳ポイントでは1回目のポイントでビソルティが1位通過し3位に浮上、集団ではクネゴがトップ通過の4位で山岳リーダージャージをキープした。
感想
ジロの最初の1週間で一番警戒していた山岳ステージであったが終わってみれば、余裕という感じだった。
実際なんの勝負にも絡んでいないし付いて行くだけだった上に最後はグルペットだったので楽なのは当然かもしれないが、かなり緊張感を持ってスタートしただけに一安心という感じではあった。
調子は今年1番と言っても良いぐらいに上がって来ているのでかなりいい感じである。
この調子を崩さないように、また調子がいいからと言って調子に乗らないように引き続き気を付けたい。
それに平坦だと思っていても昨日の様にかなりハードなステージの場合もあるので1日1日きを引き締めて集中してレースに挑みたい。
キツさレベル
6
楽だった。
かなり身構えていただけに反動で余計に楽に感じたのかもしれない。
レース展開的にもハードで無かったというのも要因ではあると思う。
ちなみに獲得標高は3300mさすが山岳ステージという事で『平坦ステージの昨日より500mも』多く登った。
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