ジロ・デ・イタリア 8日目
ジロ・デ・イタリア 8日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月14日
距離:186km
天候:曇り後雨、そして晴れ
起床時体重:61.4
起床時心拍:48
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、イウリ・フィロージ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
今日は自分かベルラートが逃げるという事になる。
自分的には逃げれるチャンスがあるとすれば今日のみ。
今日以降は平坦コースもあるがその後に山岳コースが控えているため無駄な体力を使うと完走できないからだ。
「逃げの為に動くのは今日のみ」その覚悟でスタート前から逃げの為に集中していた。
レースレポート
スタート前にサインに行くと後ろから「コンニチワー!」と声を掛けられる。
誰かと思って振り返るとアルノー・デマール。
「コンニチワー」と自分もなぜか片言で返し、「フランス語でハローは?」と聞く。
「ボンジュール」と教えてくれた。
ああ、そういえばそうかと思いながら「ボンジュール」と言うと発音が違ったようで2回ほど言い直して教えてくれた。
今日はいいことが有りそうである。
出走サイン後にインタビューがありスタートラインに並びに行くのが少し遅くなり前から3列目辺りに並ぶ。
パレード開始。
隙間を見つけては前に上がって行き、パレード中に先導車の後ろに付く。
逃げに乗る為に全力でうごくつもりではあるが、逃げに入れる可能性が1番高いのはスタートアタックでの数人の飛び出しに入る事。
長引けば確実に逃げに乗れない。
パレードが終わりレーススタート。
スタート直後の飛び出しにすぐさま飛びつく。
一瞬抜け出したがすぐに追いつかれる。
そのまま次のアタックに反応。
無線から「落ち着け」と言われるが、落ち着いていると絶対に逃げれない。
スタート直後しか自分にはチャンスが無い。
だが決めれず。
これは確実に長引く流れ。
逃げれる可能性はかなり低くなるが少し待機するしかない。
雨が降り出す。
視界が悪くなり集団前方を維持するのもかなりリスキー。
逃げたい選手がかなり多く、ごったがえしている。
集団前方にクネゴとベルラートも上がって来ている。
その後何度かアタックが続き10人くらいの選手が先行する形になる。
集団の動き的にあの逃げは捕まるのでその次が狙い目だろうと集団前方をキープする。
捕まるのに時間がかかり登りが始まる。
登りで集団が飛び出しを捕まえる為に加速し棒状1列になる。
この登りがあることは知っていた!そこまで長くない!ここを耐えきれば逃げのアタックに反応できる!
そう思っていつもは位置を下げるところだが全力で粘る。
「今は位置を下げるべきではない!今日逃げに乗らなければ今年のジロで逃げに乗ることは出来ない!キツイけど頑張れ!まだいける!キツイ!やっぱやめた!」
キツ過ぎて限界とても耐えれるレベルでは無い。
「でも登りの終わりまでの距離は短いはず、少しでも前に残っていればまだ逃げれる可能性が残る」と思い一瞬「やめた」と思った気持ちを繋ぎ直す。
限界になりながらも少しでも粘ろうと一生懸命登る。
ふら付いてしまいロットソウダルの選手と接触してしまう。
「これは良くない。これでは落車を引き起こしたバルディアーニの選手と一緒だ。これでは逃げに乗るなんてできないし、よしんば出来たとしてもスグに千切れるのが関の山だろう。自分の今の力では勝負に絡めそうな日に逃げに乗るというのは無理という事だろう。」
そう考えて逃げに乗ることを諦める。
ペースを更に落とし抜かれながら登って休む。
左折の看板が目に入る。
左折すれば下りだろう。
下りだしの直前だけもがいて下りに入る。
道は広いが雨のせいで視界も悪く路面もスリップの危険がある。
前の選手に付いて行くが前で集団が分裂している。
前の選手が交代していき自分も追いつく為に踏むが追いつけず交代。
自分の後ろにいた選手達から絶対に遅れないように気を付けて全力でそこに付く。
その集団にスカイの選手が3人おり全力で前を追ってくれる。
「ここに付いていれば復帰できる」と確信し全力で付いて行く。
相当速い。
今日は横風が無いが、一瞬でも油断すればブッ千切れるレベルでキツイ。
2,3日前に大門さんが「ワールドツアーチームが牙を剝けばひとたまりもない」と言っていたことを思い出す。
これがその片鱗だろう、付いて行くだけでマジで限界。
千切れないように全力で踏みつつ小さい体をさらに小さくして空気抵抗を減らして付いて行く。
前の集団に追いついた。
しかしそこもグルペット。
登りと下りで集団がバラバラになったのだろう。
昨日の様に爆速で前を追いかける展開が続く。
前の集団に追いつくごとにペースが一瞬落ち、そのおかげで自分より先に遅れていたスタキオッティとビソルティが合流する。
2人は前に上がって行ったが、自分は引き続き最後尾で粘る。
最後尾の方が後ろの事を気にしなくていいから気が楽。
40km辺りでやっと前に追いつきペースが落ちる。
そのタイミングで他の選手と一緒にトイレに行く。
集団に復帰する為にトイレが終わった選手で協力して集団を追いかける。
自分の前にクイックステップの選手が入ってくる。
61番、キッテルだ。
デカい。
今まで外人選手を見て縦に長いと思ったことは何度もあるが、デカいと感じたのはこれが初めてである。
何というか……全体的にデカい。
足は当然として上半身もデカい。
筋肉の付き方が素晴らしく、全身にバランス良く付いているおかげでロードレーサー特有のアンバランスさが無く綺麗。
そして、縦だけでなく横にも大きいおかげでかなり良い風除けになる。
キッテルが風を切ってる。
集団に復帰するのにかなり時間がかかる。
やっとのことで追いつくと集団のペースがかなり上がっている。
先ほどグルペットから復帰したばかりで一体何が起こっているのか分からない。
無線からの情報でベルラートが逃げているのは分かっていた。
NIPPOの選手が集まっているところに合流する。
クネゴ、グレガ、ビソルティ、ジリオーリ、スタキオッティ、グロスが居る。
グロスに「ベルラートとフィロージが逃げているのか?」と聞くと「ベルラートが逃げていて、フィロージは千切れている」と教えてくれる。
続いて「なんでこんなに速いん?」と聞くと「10人逃げていてその内の1人に総合で1分30秒遅れのクイックステップの選手が居る」と教えてくれた。
なるほど、逃げられてはマズイ選手に逃げに入られてしまったから、吸収するかタイム差を少なく保って確実に吸収できるようにしようという魂胆だろう。
でも逃げ集団は10人でローテーションし、集団は今のところ最大でもジャイアントが8人でローテーションしている状態だろう。
これでは差が詰まりにくいどころか広がる可能性がある。
その後もずっとハイペースで進み続け集団が横に広がったのは登り少し手前の90km辺り
そこからしばらく少し落ちたペースで横に広がって進む。
タイム差も最初は3分半ぐらいだったのが5分程に広がっていた。
リーダーチームのジャイアントがどういう考えなのか予想してみる。
今の感じだと自分達だけで追い続けるのはキツイと判断したのだろうか?
ならば、あえて逃げとのタイム差を大きくすることで、逃げに選手を送り込んでいない『総合リーダージャージを狙っている』チームに「お前らのチームも大きなタイム差で逃げ切られたら後々困るだろう?」と言ってタイム差を詰める為のローテーションの協力を求めるつもりだろうか?
まあなんにせよ「ベルラートが逃げに入っている」し「総合順位も狙っていない」NIPPOには関係のない話である。
自分としては今日も楽にかつ確実にゴールできればそれでいい。
その後110km地点にあった壁のような坂を越え、120km地点の3級山岳を集団で無事にクリアした。
山岳が終わってから本格的に逃げとのタイム差を詰める為に集団が加速。
それから逃れるために逃げ集団も加速し、高速の鬼ごっこが始まる。
そして自分は集団最後尾で苦しむ。
今日の打ち切りタイムリミットは恐らく先頭のゴールから30分ぐらい。
出来れば160km手前にある登りの入り口まで集団で行きたかったがキツければ千切れた方が良いかもしれない。
1人で千切れるのは危険なので誰かが千切れるのを待つ。
ラスト30kmの手前で集団の後ろから10人目辺りの選手が遅れる。
何人かはそれを交わして前に合流していくが、グレガ、ジリオーリスタキオッティを含む7名程が諦めてペースを落とす。
自分もそこに加わり、ラストの2級山岳を含む30kmを流しながらゴールした。
感想
逃げたくて全力で動いたが無理だった。
潔く諦めた方が良いと感じた。
逃げろと言って貰えれば挑戦することもあるかもしれないが、ここからは完走する事と仕事をすることに集中したい。
今日までの感じではジロ・デ・イタリアなのに山岳よりも平坦の方がしんどいという感じである。
明日のタイムトライアルは無理せずに余裕を持って走りたい。
そしてフィロージが昨日からお腹の具合を悪くしてしまい今日のレースでタイムアウトになった。
キツさレベル
7
前半のキツさは今日までのレースで1番という感じだった。
とにかくキツかったが耐えきることが出来て良かったと思う。
少しでも調子が悪ければ遅れると感じたタイミングが何度もあった。
中盤以降に関しては比較的楽に走ることが出来たので前半に負ったダメージを回復することが出来た。
amazonをお気に入り登録される際はこちらからどうぞ!山本元喜のYouTubeチャンネルはコチラ!
山本元喜の本はコチラ!