ジロ・デ・イタリア 10日目
ジロ・デ・イタリア 10日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月17日
距離:219km
天候:晴れ
起床時体重:61.2
起床時心拍:43
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
「今日はクネゴの山岳リーダージャージを何としても取り戻したい」という内容のミーティングがあった。
出来る限り前方に集まって行動するようにという指示。
レースレポート
集団の最前列に並んでパレード開始。
コーナーの多いパレードでズルズルと後ろに下がってしまう。
そしてレース開始。
開始直後もコーナーやロータリーが多くズルズル後ろへ。
開始してすぐ集団の前方からNIPPOのジャージを含む4人の選手が飛びだしているのを確認。
すぐに無線から「クネゴ行け!」という応援がンンドも聞こえる。
クネゴが飛び出しているのだろう。
しかし集団のペースは落ちず速いままで飛び出しを追いかけている。
チラッと隙間から前を見ると濃い緑のジャージが2人で集団の先頭でローテーションして追いかけている。
(バルディアーニか……)
結局その飛び出しは捕まる。
その後再びアタック合戦が続く。
協力する為に前に上がろうとするがハイペース過ぎて無理。
近くに居たビソルティも上がっては下がりを繰り返す。
前に上がりたいがこれでは無理。
仕方がないのでここで待機するか……むしろそうした方が良い。
というのも第6ステージから第8ステージにかけて雨と寒さの中でレースをしていたことにより咳が出て喉が痛くなっていた。
そして第9ステージではレポートにも書いたが筋肉の状態は良かったが心肺機能が絶不調になってしまった。
そして昨日の休息日では咳と喉の痛さがピークに……完全に風邪だった。
しかし今朝起きた時点では風邪は治っていたように感じた。
治っていたように感じはしたが本当に治っているかは不明。
治っていたとしてもここで無理をすれば再びぶり返す危険もある。
無理をしない為にも前には上がらない方が良い。
無線で呼び出されるようなことが有れば話は別だが、今はまだ呼ばれていない。
心拍数を確認しながら走る。
160後半まで上がっている。
これは心肺機能がしっかり機能している証拠なので良い。
そして少しキツイ。
キツさの感覚は主観的なものなので調子がいいかどうかの判断にはあまり役立たない。
登りが始まれば周りの苦しみ方と比較することで本格的に調子を把握することが出来るだろう。
そしてその後もアタックが続いては吸収を繰り返してレースが進む。
(これはマズイ展開だよな……)
メーターの距離は20kmを過ぎようとしていた。
21kmからは登りが始まる。
登りまでアタック合戦が長引いた際にはペースが収まらず悲惨な事になるだろう。
出来れば今日は登りが始まる前に逃げが決まり、落ち着いたペースで登りに入りたかった。
思った通りハイペースなままで登りに入る。
しかし事情が少し違った。
アスタナが先頭で集団をコントロールしていた。
アタック合戦では無くコントロールされた状態でのハイペース。
アタック合戦が継続している事より具合が悪い。
アタック合戦によるペースアップであれば疲れて来たり逃げが決まればペースが落ちる。
しかしコントロールによるペースアップは違う。
自分達が力尽きないペースを保ってローテーションを続ける為、基本的にペースが落ちることは無い。
今の場合は山頂を通過するまではこのペースを刻み続けるだろう。
今はまだ耐えれるが山頂までの16kmを耐えれるペースでは無い。
いずれは千切れるしかないのだろうが、とりあえず限界にならない程度に付いていこう。
登りのハイペースに付いて行く。
最初にスタキオッティが下がって行く。
調子が悪いのだろうか?
その後、何度か集団の最後尾10人ほどが千切れる。
ほぼ最後尾で登りだしていた自分はそのたびに新たに出来る集団最後尾に追いつく。
グロスが数人と一緒に千切れ下がって行く。
その後ベルラートが10人以上の選手と共に千切れて下がって行くのをパスする。
集団に付いて行くが中々キツイ。
心拍数は180を超えている。
(よし!行ける!調子が良い!千切れよう!)
調子の確認は済んだ。
無理に付いて行く必要は無い。
自分の後ろには相当な人数が遅れている。
この調子であればグルペットから千切れる事は無い。
次にペースが上がったタイミングで千切れた。
しばらく一定のペースで登り心拍数を楽な数値まで落とす。
しばらく登っているとベルラートを含む20人以上の大集団に追いつかれる。
そこに合流して登る。
無理をしない集団なので楽に登れる。
さっきのアスタナのコントロールは相当キツかった。
数日前に大門さんから言われた「ワールドツアーチームが牙を剝けばひとたまりも無い」という言葉を思い出す。
しかし今のは牙を剝いた訳ではないだろう……
研いでいる牙を軽く見せた程度?
「逆らえばこの牙で嚙み千切るぞ」という警告だろうか?
そんな事を考えながら登り山頂通過。
下りに入る。
無駄にローテーションに入って披露しないように集団後方に付いて行く。
無線で自分の居る集団の情報が入る。
どうやら40人以上の集団らしい。
この人数であれば前に追いつける可能性が高い。
追いつけなくとも全員で協力すれば確実にゴール出来る。
そう考えて集団後方で付いて行く。
すると次の登りが始まる手前で集団に追いついた。
追いついた直後に登りが始まる。
先頭を見れば再びアスタナのコントロール。
ペースアップを恐れるが今回は軽めのペースで山頂まで登った。
山頂手前で下りに備えて集団前方に上がろうとするが、登り切ってからもしばらく平坦が続くことを思い出し踏み止まる。
自転車だけに踏み止まる。
山頂通過後しばらく緩いアップダウンを繰り返して走る。
そして「モンテーゼ」の町を過ぎる。
この町は知っている。
練習で何度か通ったことが有る。
という事はここから先のコースも走った事がある道かもしれない。
どちらに向かっているかは分からないがその内分かるだろう。
その後下りに入る。
この下りも知っている。
長く下るがコーナーはあまり深くない、練習の時にもかなりのペースで下っていた。
2車線使える今であればあまりブレーキを使わずに下れるだろう。
後半には九十九折のコーナーが連続し危険。
そこを過ぎた直後に川沿いの平坦区間に左折して入る。
恐らくそこで伸びた集団が一気に縮むのでしっかり前に付いて行かないと遅れてしまう。
いつの間にか前に居たグライペルに付いて行く。
コースを知っている&グライペルの方が圧倒的に重いのでスリップするのであれば彼が先という安心感で下りのコーナーをガンガン攻めていく。
後ろから見たグライペルは基本的には筋肉質なパワー系スプリンター体系。
しかしふくらはぎだけは異様に発達している。
「どこでその筋肉使うの?」というレベルでデカい。
覚えていた通り下り川沿いへ。
集団が加速すると警戒し備えていたおかげで楽に集団に合流できた。
川沿いの平坦区間でビソルティとグレガが居るところに合流する。
無善からの情報でクネゴが逃げに入っていることは分かるが、どうやらトップ集団には居ない様子。
芋掘りだろうか?
ビソルティに「クネゴは逃げているのか?」と聞くと返事の代わりに。無線で「クネゴはトップの逃げ集団に入っているのか?」と聞いてくれる。
自分の立場では効きにくい内容だけに聞いて貰えて助かる。
無線から「3人が先頭で逃げており、それを追いかけてクネゴを含む10人が逃げている」と情報が入る。
ビソルティが改めてそれを説明してくれる。
「ありがとう」と言ってから、ついでにこの先のコースについても確認する。
「112kmから登りが始まって、130kmで登りが終わり、そこからアップダウン。で合ってる?」と聞くと「オッケー」とだけ返してくれる。
期限が悪いわけでは無くて基本的に寡黙。
登りが近づく。
(さて、どうしたものか……。グレガは調子が上がって来てるっぽい。現に最初の登りではグレガを待つ前に千切れてしまった。という事は誰か別の標的を見つける必要がある……。確実に完走することが見込め、楽に登ろうとするであろう人物……やはりグライペルか。)
そこから「グライペルを探せ」が始まる。
登り始めてすぐにグライペルを発見。
真後ろにピッタリ付いて行く。
なぜかすでにキツそう。
キツそうな雰囲気を出しつつもしっかり集団に付いて登っていくグライペル。
集団のペースがそこまで上がっていないこともあり自分は楽。
グライペルが上手い事位置取りすることも楽に登れる要因の一つ。
(グライペルは今日は確実に完走狙いのハズなので付いて行けば問題ない。グライペルが千切れそうな時に自分に余裕があれば集団に付いて行けばいいし、なければ一緒に千切れればいい。基本的には186kmの長い登りの麓までは集団で行きたいが……まぁ最低でもグライペルのグルペット……グライペットに残れればいいか……)
そんな事を考えながら付いて行く。
その後130kmの登り終わりまで一定のペースで進んだおかげでグライペットは発生しなかった。
そこからアップダウン区間に入る。
1つ1つのアップダウンに結構な高低差があるので結構キツイ。
途中でボトルの水がかなり少ないことに気付き、登りでチームカーを呼ぶ。
少し時間がかかり下りでのボトルの受け渡し。
相当怖い。
高速で下りながら片手放しでボトルを受け取るのだが、コーナーも有る為かなり危険。
自分の分と無線で頼まれたビソルティの分、そして余分に1つの合計3つ受け取るのがやっとだった。
受け取ってから集団の最後尾に追いつきいったん休憩。
休憩中にモビスターの選手が背中に大量のボトルを詰め込んで自分を抜いて行く。
あの下りのどこでそれだけのボトルを受け取れたのか……さすがワールドツアー。
その後ビソルティにボトルを渡し、余ったボトルを近くに居たグレガに渡しに行く。
グレガに渡してから後ろにいたグロスの顔を見ると相当キツそう。
大丈夫か?と思った直後に遅れて行った。
そこからは再びグライペルの後ろを陣取って走った。
最終的に目標としていた186km地点でグライペットが発生しそこで休みながら帰って来た。
帰っている途中で同じグルペットに居たベルラートからクネゴが2位に入ったと教えてもらった。
「1位は?」と聞くと「バルディアーニのチッコネという選手、かなり若い」と教えてくれた。
うるさいだけかと思っていたが若くて凄い選手も居るんだなと思った。
うるさい選手は若くは無かったのでチッコネとは別だろうとは思うが。
感想
前日まで体調を崩していたこともあり相当警戒してレースに挑んだが、むしろ絶好調という感じで本当に良かった。
だが、再び風邪がぶり返す可能性もあるので引き続き気を付けて走るようにしたい。
キツさレベル
9
特にキツイと感じたのは始めの登りだけではあったが、さすがに走行時間6時間越え、走行距離219km、獲得標高4200mとなればゴールした際の疲労度は半端無いものがあった。
しっかり休んで回復させて明日以降に備えたい。
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