ジロ・デ・イタリア 13日目
ジロ・デ・イタリア 13日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月20日
距離:170km
天候:晴れ
起床時体重:61.6
起床時心拍:46
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
今日はグレガの側にいればいいという指示。
ハードな山岳ステージなので自分が出来ることは殆どないだろう、完走しなくてはいけない。
レースレポート
今日はスタート地点に移動するチームバスの中で念入りに距離をチェックする。
49kmから9kmの登り、72kmから9kmの登り130kmから9kmの登り。
9関係の数字が多いので覚えやすい。
130kmの登りの入り口まで集団で行ければ十分だろう。
そんな軽い感じでスタートラインに並ぶ。
位置は結構後ろ。
短めのパレードを終えレース開始。
さっさと逃げが決まってペースが緩んでくれれば嬉しい。
そんな訳にはいかず延々とアタックが繰り返される集団先頭。
それに引きずられ高速で進む集団。
横風も軽くふき集団後方で苦しむ自分。
「前に上がれ」という指示が聞こえる無線。
とても前に上がれる状態じゃない自分。
足の筋肉が結構痛く重い。
昨日のレースでアタックやらなんやらやり過ぎた。
ダメージが残っている。
今仕事をすれば確実に後で散る。
そもそもペースが速すぎて前に上がれる状態じゃない。
集団最後尾で上体を落として付いて行く。
(ペースは速いし足もキツイが大丈夫!自分にはまだ下ハンとそこからの前傾姿勢、そして下ハンもがきが残っている!)
等と訳の分からないことを考えながら付いて行く。
常に下ハン(下ハンドル)で走らないのは疲労を1か所に溜めない為。
下ハンを持って体を小さくすればするほど空気抵抗が減り楽には走れるが、その分使える筋肉が減っていき疲労が溜まりやすくなる。
マジでヤバい!という時の為に使うために下ハンは簡単には握らない。
そもそも体が小さいおかげでエルゴパワー(シマノで言うところのSTI)を握っていても十分スリップストリームに入れる。
下ハンはいわゆる必殺技。
ちなみに下ハンもがきは下ハンを持って上体を落とした状態でダンシングして全力でもがく。
本来ダンシングする為にサドルからお尻を上げると空気抵抗が増すが、自分は小さいのでダンシングしても風を全然浴びない。
四頭筋にかなり疲労が来るので短時間しかもたないが、かなりの出力が出るので本当に、本当に、ギリギリの時に少しだけ長く前に付いて行ける。
いわゆる超必殺技。
その後程なくしてペースがさらに上がり下ハンで上体を落として付いて行くことになる。
このポジションになると後ろの選手はモロに風を受けることになる。
他のチームとはいえさすがに申し訳なく感じるが、今は最後尾なので関係ない。
緩やかなアップダウンを高速で過ぎる中で集団先頭を見ると結構バラけている。
逃げが2つ3つ出来ている。
その後どうなったかは分からないが一旦ペースが落ちて登りに向かって行く。
無線から「クネゴとボーレが逃げに入っている?(集団から飛び出しているのは確実だがイマイチ内容が理解できなかった)」という情報が入って来る。
2大エースが飛び出しているのであればNIPPOとしては問題ないはず、あとはペースが落ちた集団でラスト130kmまで走りそこからグルペットに入ればいい。
悲しいことにグライペルは家に帰ったらしくグライペットは発生しないが、そのあたりで出来るグルペットに入れば完走は確実だろう。
しかしレースは思い通りに行かない。
登りに入りペースが上がる。
マジで?と思いながら付いて行く。
かなり勾配の急な区間に入り見上げた位置に集団の先頭が見える。
何故か2、3人飛び出している。
何してるの?と思った瞬間集団の先頭が活発化。
再びアタックがかかり始める。
この9kmの登りで逃げを吸収して山岳争い&総合争いを始める気だろう。
グルペットに残りたい身としてはたまった物じゃない。
もっと平和に走って欲しい。
しかし本来のレースの形としては今の状況が正しいわけで文句を思っている自分が間違っている。
集団のペースが上がる。
いつも通り最初に遅れてくるスタキオッティ。
他にも遅れだす他チームの選手をパスして行く。
まだここは千切れるところでは無い。
後ろには恐らくグルペットが出来ているがそこには入りたくない。
早くできたグルペットは前から遅れだすのが早い為、タイムアウトにならないように速いペースで走る必要がある。
しかも、特に登るのが遅いメンバーが集中するため、下りと平坦のペースがより速く、人数も少ないので自分も前を引かなくてはいけなくなる。
そのグルペットに入ればかなり疲労することになる。
楽をする為に大きなグルペットが出来るまでキツクても耐える。
しばらく集団に付いて耐える。
耐えていくと集団が大きく分かれ出す。
前に残りたい選手は分断したところから急いで上がって行くが、結構な人数がグルペットをつくろうとしている。
ベルラートもいる。
ここで良いだろうと判断する。
そもそも足の調子的にも昨日の疲労が残っているのでそこまで無理は出来ない。
そこで形成されたグルペットに混ざってペースで登る。
第1山岳でグルペットを形成したため残りの距離がまだまだある。
その為グルペットではあるが登りのペースが結構速い。
自分はまぁまぁ耐えれるというペースだった。
頂上まで登り切り下りへ。
前の選手から離れないように集中して下る。
数人前の選手がハンドシグナルで「路面注意」と教えてくれる。
なぜか道路の真ん中に踏みつぶされてペチャンコになった馬糞。
臭い。
ジロで使う道路なのだからちゃんと掃除しておいて欲しい。
そのすぐ後に下りのペースが落ちる。
前方を見るとランプレのチームカーが道路の右側でユックリ下っていて邪魔になっている。
ランプレのチームカーを左側から抜く。
無線から「馬が!馬が!」と聞こえてくる。
ランプレのチームカーの前に馬がいた。
下る自転車の集団と並走して全力疾走中の馬が。
1匹ではなく超大量。
大きな大人の馬も子馬も全力疾走。
道路のセンターラインを跨いで右に馬の列車、左に自転車の列車。
先頭の馬がセンターラインを割って左に入ってきており、馬の少し後ろの選手がビビッて抜けないせいで集団が中切れを起こしている。
「さっさと抜けよ!」といった感じで野次を飛ばしている選手も居るが中々抜けない。
そりゃ怖いだろう、下手に抜いたら興奮した馬に吹き飛ばされかねないからな……。
恐らく今でもすでに興奮状態。
20匹近い馬が首を振り回しながら下りを全力疾走。
どうしてこうなった……。
先頭の馬が右に戻った瞬間に全力で選手が抜いて行く。
自分も上手く抜くことができてその後ある程度下り再び登りだしたところで離れていた集団に追いついた。
登りで馬に追いつかれないかと若干ビビっていたが馬はやってこなかった。
その後81km地点の山岳ポイントを過ぎて再び下りへ。
今回は1回目と違いほぼ1車線の細くコーナーも多い下り。
相当怖いが前に全力で付いて行く。
レース前半に出来たグルペットという事でトップからの遅れを少しでも押さえようと下りは過去最高に速い。
前の選手に集中しつつ、その10人くらい先の選手のバイクの倒し方や減速の具合も確認し、ブラインドコーナーの深さを予測してビビりながらも遅れずに全力で下る。
経験したこと無いくらいの「爆速で危険な下り」を遅れることなく下り切れた。
そこから平坦に入る。
そこでグルペットの人数を確認すると30~40人近くいた。
この人数がいれば自分が先頭交代に入らなくても問題ない。
下りと同様、遅れを押さえる為に平坦もかなりの速度で突き進む。
後ろに付いているだけでも中々踏まなければいけないぐらい速い。
平坦が終わり130kmからの登りに入る。
先頭とのタイム差が打ち切られない安全圏だったということと、平坦での爆速で疲れたのか残り2つの山岳ポイントは比較的ユックリ登り、下りは相変わらず爆速で突っ込んでいき無事に32分遅れでゴールした。
感想
予想していたよりも遥かに早いタイミングでのグルペット入りだったが判断としては悪くなかったと思う。
これからのグルペットの指標としてはベルラートだろうか?
自分の調子を見つつ人数の多いグルペットに入るのが一番楽をする方法だと思う。
ここからはグルペットの見極めが非常に重要になるので集中して判断したい。
なぜコースに馬が侵入してきたのかは謎だったが、これもジロ・デ・イタリアなのか……といった感じだった。
明日は今年のジロにおいて最初の「超級山岳ステージ」なので未知のキツさに負けないように頑張りたい。
キツさレベル
7
かなり早くにグルペット送りになったが、先頭も引かずに付いて行くだけで良かったので意外と疲れていないかも入れない。
それでも獲得標高3300のハードなレースだったので疲労は絶対していると思う。
しっかり休みたい。
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