ジロ・デ・イタリア 14日目
ジロ・デ・イタリア 14日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月21日
距離:210km
天候:晴れ
起床時体重:61.0
起床時心拍:44
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、ジャコモ・ベルラート、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
レース前にジュリアーニに作戦を聞きに行く。
「今日はレースが落ち着いてからは休んで良い。でも、クネゴを逃げに送り込むまでは逃げを潰したり逃げに入って先頭交代に加わらないといった動きをするように。チームにとって今一番重要なのがクネゴの持っている山岳リーダージャージなのでクネゴだけに任せるのではなく他の選手も出来るところで援護するように」という指示が出た。
レースレポート
スタートラインにかなり前方で並ぶ。
パレードが終わりレーススタート。
スタート直後にクネゴがアタックを掛ける。
4人ほどが飛び出す。
この逃げが決まればいいのだが……
やはり捕まった。
そこからアタックが繰り返される。
自分も集団前方を維持するが中々タイミングが見つからずアタックに反応できない。
前に上がっては反応するタイミングが無く集団に呑み込まれるという動きを繰り返す。
無線でベルラートが「俺しか動けて無いぞ!」と怒っている。
その後少しして集団の先頭に出ることに成功。
IAMの選手が2人で列車を組んでいるのを見つけその後ろに付く。
列車を組んだ2人がそのまま凄い勢いでアタック。
付いているだけで千切れそうになるが、ここで千切れては仕事にならないと思い必死で付く。
1分以上IAMの1人目の選手が踏み続ける。
2人目の選手を逃げさせるための発射台だろう。
IAMの1人目の選手が先頭を代わる。
自分は先頭に出る意味が無いので、1人目の選手が下がって来るのに合わせて自分も下がる。
クネゴが逃げる為にチェックに入っているだけなので先頭を引いて逃げる為の手助けをしてはいけない。
自分は逃げを潰す為にアタックに反応しているのである。
後ろを見ると集団がバラバラになりながら追いかけて来ている。
自分達の所に追いついて来た選手を自分の前に入らせるように動き、飛び出したメンバーの最後尾に付く。
後ろからビソルティも追いついてきたが自分と同様ほぼ最後尾に付いている。
10人以上の飛び出し。
集団は結構離れている。
(これはマズイ。こんな怪物たちと逃げたくない。さっさと集団が追いついてくれ!)
そんなことを思いながら飛び出したメンバーの最後尾に付いて行く。
逃げを決めたい選手が「日本人!ローテーションに入れよ!」と言ってくる。
自分が逃げを潰すために付いて行っていることが分かっているだろうに……
無視して最後尾に付きっぱなしになる。
しばらくして集団に追いつかれる。
これで一安心。
一旦集団内に吸収される。
そろそろクネゴの加わった逃げが決まってくれれば助かる。
アタックが繰り返されるが、逃げが決まらず。
十分休むことが出来たと判断し、再び前に上がろうとする。
集団が密集していて中々前に上がれない。
集団左側にスペースが出来たので一気に前に上がる。
そこからアタックに反応していく。
アタック合戦が長期化しているせいかやる気が無いのか、アタックがそこまで速くない。
2,3人が飛び出した場合に反応し逃げが決まらないようにする。
昨日と違い足の調子がかなり良い。
集団が追いかけるのを利用したりして自分だけが動きすぎないように気を付ける。
上手く反応出来ているおかげもあり、そこまで疲れずに飛び出しをチェック出来ている。
潰すために動いているので先頭に出なくていいというのも大きい。
逃げが決まらないまま登りの勾配が少しキツクなる。
(足の調子はいいが、この勾配でのアタックに反応するのは結構足に来る。完走するための足を残すためにもこの辺りで止めた方が良い)
そう判断して集団内に戻る。
自分が集団内に戻った直後にクネゴとベルラートを含む30人近い選手が数名ずつ集団から飛び出していき、それが合流して大きな逃げが出来た。
逃げが決まったのが40km過ぎ。
逃げが決まってからはモビスターのコントロールで集団が進む。
緩やかな勾配の区間が終わり勾配がキツクなる。
山岳地点に向かう9kmの登りが始まる。
コントロールのペースがユックリな為そこまでキツクは無い。
ペースが上がらないか心配しながら登ったがそのままで山頂を過ぎた。
94km通過。
そこから下りに入る。
前の選手に付いて行くことは出来るが、ペースが相当速い。
集団が縦に伸びているのが分かる。
6kmの下りが終わり再び登りが始まる。
下りで縮んだ分を取り返すために集団の後方が凄い勢いで登りに入っていく。
そのせいで集団がブチブチの千切れている。
(この加速は集団のペースアップで発生しているわけではない。先頭に追い付くことが出来れば楽に登る事が出来るはず。)
そう思い前に
追いつこうと踏んでいくが中々追いつけない。
足がキツクは無いが呼吸がかなり辛い。
それもそのはず。現在標高2000m。
2000mと言えば、低酸素トレーニングをする際に初期に設定する高度である。
普通の状態で有るはずがない。
キツ過ぎて前に追いつくことを断念。
ちょうど近くにグレガも居たのでその周辺にいる選手が作るグルペットに入ることにする。
グルペットに入ったは良いがそれでも相当キツイ。
前半に動いたのが原因か、前に追いつこうと無理をしたのが原因かは分からないがとにかくキツイ。
標高が高いことが原因であることは確実。
頭がクラクラする。
呼吸もかなり辛い。
あまりにしんど過ぎて「ジロ完走」という目標がどうでも良くなって来る。
これだけキツイ思いをするぐらいであれば、完走を諦めて千切れた方がよっぽど良いと思ってしまうくらいキツイ。
しかし、なぜ頑張れたのかは正直分からないが諦めずにそのグルペットに付いて行くことが出来た。
前に付いて行くという本能だろうか?
2回目の山頂を過ぎ下りに入り、再びすぐに登り始める。
(残りの登りが6km2回で12kmその後に9km……考えるのを止めよう)
残りの登りの合計距離など考えるだけでキツクなると思ったので計算するのを途中でやめる。
1つ1つ登りをクリアすることに集中しよう。
進んでいる限りはゴールに近づいている。
その後山岳2つを越え、平坦のようなアップダウン区間に入る。
少し余裕が出て来たので、その時点での獲得標高を確認する。
獲得標高3000m。
なるほどね……見なければ良かったね……今日は合計何m登るんだろうね……。
後悔しながら集団に付いて行く。
そのころにはグルペットの人数がかなり増え30人以上になっていた。
同じグルペットにグレガ、ジリオーリ、ビソルティ、グロスがおり、そこにアップダウンの区間で前から遅れて来たベルラートが合流する。
スタキオッティは自分たちのグルペットの更に後ろに居る。
159kmから始まる山岳ポイントに向かう登りに入る。
この登りは9kmで平均勾配は確か10%近かったはず。
何故か登り出しの速度が速い。
かなりキツイ。
グルペットなのに意味が分からない。
自分の隣でグレガがブチ切れ「頭大丈夫か!(あまりに汚い言葉だったので意訳)」と叫ぶ。
他の選手も同意だったようで「ユックリ走れ!」と叫んでいる。
最終的にBMCの選手が前に上がって行きペースをコントロールし出した。
その時点で時速9km程。
この坂を1時間近く登るんですか……?と恐怖しながら登る。
最終的に47分かけて9kmの登りが終わる。
登りの頂上で「集団トップから30分遅れ」という情報が入る。
他のチームにも同様の情報が入ったのかそれ以降は平坦、登り共にユックリなペースで走った。
下りに関しては「頭のネジが飛んでいる」としか思えないような爆速で下った。
168kmからの下りは先頭から5番目で下り出し、前から遅れるごとに後ろの選手に抜いてもらう事で(後ろにいた選手にとってはそうとうウザかっただろうが)集団の中盤で下り切れた。
最後の下りは前回の下りを反省し、前に付いて行くことだけに集中しまくったおかげで、「こける」という事を忘れることが出来、千切れずに付いて行けた。
そしてトップから45分程遅れた最終グルペットでゴールした。
クネゴは1回目の山岳ポイントをベルラートの全力のアシストのおかげで1位通過し山岳リーダージャージを2位の選手に62点差の134点でキープした。
その代わりにベルラートが力尽きてしまい、DNFに。
ぶっ倒れた状態で点滴を打たれながらチームバスに運び込まれてきた。
感想
そうとうキツイレースだった。
何としても達成したいと思っていた完走を諦めそうになるくらいにキツイレースだった。
しかし耐えきることが出来た。
今日のレースを耐えることが出来たおかげで確実に強くなったと思う。
完走がグッと近くなったと感じるが、油断せずに明日の登りのタイムトライアルに全力で挑みたい。
今日のレースは走行時間6時間48分、走行距離210km、獲得標高5050m、最高スピード時速87.7km、頭おかしいと思う。
昔に聞いた、ジロかツールが「キツ過ぎる」という理由で人権団体から訴えられているという噂の意味が分かった。
もっとも、自分はジロが走れて幸せではあるが。
キツさレベル
10
本気でキツかった。
後半はグルペットのペースが落ちていたので多少回復させることが出来たっぽいが。
疲労度は1日で半端無い。
絶好調の極みと言えるレベルの調子で挑んでこれなのだから少しでも調子が悪ければ終わっていたと思う。
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