ジロ・デ・イタリア 19日目
ジロ・デ・イタリア 19日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月27日
距離:162km
天候:晴れ
起床時体重:60.7
起床時心拍:47
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
クネゴの山岳リーダージャージを守る為にクネゴが乗れていない逃げは潰すといった感じの内容だった。
一応レース前にジュリアーニに確認に行く。
「山岳ポイント争いに入っている選手が行った場合には潰した方が良いが、それ以外の場合は逃がしても構わない。グレガの側にいて指示に従えばいい」と言われた。
レースレポート
スタート地点に並びに行きグレガと会話する。
グレガが「ヒロシ(大門さん)が言っていたがお前のブログに俺が登場しているのか?」と聞かれ、「先生みたいな感じって書いているよ」と答える。
「じゃあ俺も日本で有名だな!ジャパンカップに行ったら大人気か?」と聞かれたので「たぶんそうだと思う」と答えた。
その後に今日の動きの話になる「援護はするが足を使い切らないように気を付けろ。今日の登りはかなり長いから全力を出し切ると遅れた際に一気に遅れてしまう。前でローテーションして追うとなった際にも足を使い切らないように気を付けろ」と教えられる。
そしてパレード開始。
短めのパレードが終わりレース開始。
出来ればクネゴを含む逃げが早く決まってくれれば良いが、そうはいかないだろう。
自分の足の調子は良くないだろう。
出発の時点で足がむくんでいた。
少なくとも30分は走らないとむくみが取れないだろう。
それまでは確実に足が重いまま走ることになる。
むくみが取れても昨日のダメージが筋肉に残っている可能性が高い。
いずれにせよ厳しいステージになることは確定的。
アシストの動きが出来れば良いのだが、どうだろうか?
レース開始からの平坦区間でアタック合戦が始まる。
かなり速い。
グレガが前に上がって行くが付いて行けず取り残される。
ロータリーやコーナーが連続してとても上がれる状態じゃない。
付いて行くだけで相当キツイ
集団後方でかなり苦しむ。
足が重い事もあり半端無くキツイ。
無線から「ヤマモト、スタキオッティ!前に上がれ!」という指示が聞こえるが上がれる状態じゃない。
むしろ気が付けば最後尾に追いやられていた。
無線から「おい!聞こえてるのか!誰か返事しろ!」という声が聞こえてくる。
誰も答えない。
全員キツクて答えてる場合じゃないのだろう。
最初の30分が経過する。
足のむくみが取れたかどうかは不明だが、足が重いまま。
それでも「仕事をしないと」と思い前に上がろうと頑張る。
ペースが落ちたタイミングで足を使って前に上がり、ペースが上がって後ろに引きずり戻される。
何度頑張っても同じ。
そうとうキツイ。
40kmを越えて緩やかに登りが始まる。
逃げが決まっているのかどうかは知らないが、アタックがかかっているのは確か。
集団が伸び縮みしてメチャクチャキツイ。
前に上がるとか言っている場合じゃない。
嵐が終わるのを待つかのように耐え続ける。
延々と続くアタック。
キレが無くなってきているのか集団の伸び縮みは少なくなる。
その代わりに一定の速いペースで緩やかな登りを登り続ける。
これもキツイ。
しかしここで千切れる訳にはいかない。
とにかく全力で付いて行く。
しばらくして集団前方を見ると、「もういいやろ」とでも言いたげに集団が大きく分断している。
先行する集団からはアタックがかかり活性化しているが、後ろの集団は離れすぎない程度のペースを保って付いて行っている。
集団のペースが落ちてきたこともあり若干楽になる。
最終的に逃げが決まってペースが落ちたのが70km手前。
それまでは延々と苦しむことになった。
逃げに関しては、人数やメンバーは一切分からないがクネゴが入ったのは確かだった。
そこから一定のペースで登る集団内でとにかく休む。
後半に向けて足を回復させないとマズイ。
理想としては山岳ポイント10km手前まで集団に付いて行きたい。
そこまでは勾配も比較的楽な上、距離的にも96km地点なのでそこまで行ってグルペットに入ることが出来れば完走は確実。
ペースが上がらないように祈りながら付いて行く。
後ろに下がって来たグレガに「調子はどうだ?」と聞かれ「相当キツイ」と答えると「俺もキツイ」と言っていた。
「出来れば96km地点からの登りで千切れてしまいたい」と伝えると「山頂は何km?」と聞かれ「105km辺りだと思う」というと「なるほど」と言っていた。
集団のペースがそこまで上がらないまま96kmまで来る。
一目見ただけで分かるこれまでと明らかに勾配の違う坂が出迎えてくれる。
登りに突入したタイミングでグレガがチームカーにボトルとアームウォーマーを取りに行く。
最後尾にいた自分に「(無理に付いて行かず)ペースを落として登るぞ。グルペットには後で追いつけばいい」と伝えてくれたので自分も遅れる。
遅れたついでにチームカーからレインジャケットを受け取っておく。
山頂付近で着込んでいると集団から遅れる可能性があるし、今でも吐き出す息が白くなるくらいには気温が低い。
自分達が遅れてからすぐに集団からかなりの人数が遅れてグルペットが出来上がった。
グルペットのメンバーに力が残っている間はペースがあまり落ちないので追いつかず、疲れて来てペースが落ちだしたところで合流した。
かなり休むことが出来たので足はかなり回復している様子。
しかし絶対に無理をしてはいけない。
今日は標高2700mを越える。
少しの無理で一気にキツクなる可能性がある。
登っていく毎に道路脇に積もっている雪が増えていく。
事前の情報では5m積もっているところも有るらしい。
雪だけでなく霧も徐々に濃くなっていく。
周りの景色がほとんど見えないぐらい霧が濃い。
下りもこれくらい霧が濃いのであれば、前方が見えない為かなり危険になる。
その分遅くもなると思うので悪くは無いかもしれないが。
山頂まで2kmを切る。
レインジャケットを手放しで着ようとするが、速度がユックリ過ぎて安定しなくて危険。
仕方がないので一旦止まってからジッパーを半分ぐらい上げた状態で集団に復帰する。
気温が低いとはいえまだ上っているので、ジッパーを全部上げてしまうと暑い。
山頂が近づくにつれて霧が晴れ出した。
これぐらい見通しが良ければ下りは問題無さそう。
ちなみに周りの景色は霧が晴れても白一色、辺り一面雪だらけだった。
集団の6番手辺りで登り切りジッパーを全部上げて下りに入る。
前の5人が相当速く下る。
普段であれば付いて行こうとするのだが少しためらってしまう。
路面が湿っているように見える。
もし路面が湿っているのであればこのペースは確実にオーバーペース。
相当危険なことをしている事になる。
ビビッてしまって遅れる。
後ろにまだまだ選手が居るので問題ない。
それでも緩い右コーナーで踏み込んで遅れを取り戻そうとする。
そのタイミングで地面の凹みに突っ込み跳ね上がる。
ビックリしてブレーキを掛ける。
後輪がかなりスリップした。
普通はここまでスリップしない。
路面が湿っているか、滑りやすいかのどちらか。
いずれにしても絶対に攻めるべきではない。
ペースを落として下りだすと、後ろからグロスと2人の選手が「遅すぎ」とでも言わんばかりに一気に抜いて行く。
そして左コーナー手前でグロスが地面の凹みに突っ込んで跳ね上がる。
ブレーキをかけて後輪が滑りバランスを崩して、右の雪の壁に突っ込む。
グロスの後ろに居た2人も回避できずに壁に突っ込んだ。
グロスに突っ込まれて抉られた雪の壁がバラバラになって道の真ん中辺りまで飛び散る。
雪の壁に跳ね返されたグロスのバイクが道路の真ん中を結構な速さで滑って行く。
バイクに突っ込まないように注意しながら回避する。
そこからは更に慎重に下る。
後ろから他の選手に抜かれるたびに付いては行くが無理はしない。
しばらくヘアピンコーナーが連続してから直線的な下りに入る。
その辺りでは路面が乾いていたのでかなり高速で下って遅れた分を取り戻す。
下りの途中でカチューシャのチームカーと救急車が止まっていた。
誰か吹き飛んだんだろうか?
その後無事に前に追いつく。
壁に突っ込んだグロスも集団に復帰する。
そこからは前を曳いて疲れないようにグルペット後方で付いて行っただけ。
ラスと10kmの登りに入り、ラスト7km地点で無線から「ニーバリがマリアローザを4分離してゴールした」という情報が入って来た。
打ち切りのタイムリミットまでかなりの時間が有ったので、そこからはグルペットの全員がユックリしたペースで走りゴールした。
感想
前半のキツさが半端無かった。
ホテルでスタキオッティとも話したが、とても上がれる状態じゃなかったし、キツ過ぎて返事も出来ないと言っていた。
ペースが落ち着いてからは少し休むことが出来たし、その後もグルペットだったので楽が出来たが、落ち着くまでが70km近くかかったので疲労が半端無い。
筋肉もガチガチなのでしっかりストレッチをして、最後の山場である明日のレースに全力で挑みたい。
血反吐を吐いてでも完走するつもりなので頑張りを見ておいて欲しい。
キツさレベル
9
前半のダメージが半端無く、それ以降もペースは楽だと感じることが有っても足はずっとしんどいままだった。
昨日今日とかなりキツイが明日を耐え抜いて完走したい。
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