ジロ・デ・イタリア 20日目
ジロ・デ・イタリア 20日目
クラス:WT ステージレース
開催国:イタリア
日程:5月28日
距離:134km
天候:晴れ
起床時体重:60.7
起床時心拍:54
出場チームメイト:ダミアーノ・クネゴ、アレサンドロ・ビソルティ、グレガ・ボーレ、リカルド・スタキオッティ、エドワード・グロス、山本元喜、ジャンフランコ・ジリオーリ
コースプロフィールは省略。
レース前のミーティング
今日の指示はグレガの側に居るようにとのこと。
レースレポート
一昨日と昨日の疲れ&今日のレースがスタートからイキナリの登りという事で滅多にしないローラーアップをしてからスタートラインに並びに行く。
結構前に並ぶことが出来た。
アップやスタートラインに並びに行く際に走った感じでは足の感じが結構良さそう。
もしかしたら登りでクネゴの援護が出来るかもしれないと思いながらパレード開始を待つ。
短めのパレードを終えてレース開始。
イキナリの登り。
開始直後はペースが上がらない。
開始と同時に逃げが行ったのだろうか?それとも嵐の前の静けさというやつだろうか?
出来れば前者を期待したいが、恐らく後者だろう。
しばらくして集団の先頭が縦に伸び出す。
その瞬間に前方から聞こえてくる「グルペートッ」という悲鳴。
悲鳴を無視して加速して行く集団。
アタック合戦が始まる。
今日は調子が良いはず、心拍数もいい感じに上がっているし足も軽く感じる。
起床時心拍は54とジロの期間中で最高値を記録していたが、ホテルが標高2000mにあったせいだろう。
クネゴの援護をしようと前に上がろうとする。
頭打ちだと思っていた集団の速度が更に上がる。
前に上がるどころか後ろに振り落とされる。
半端ねぇ!これがスタート直後のフレッシュな状態でのアタック合戦!援護とか舐めたことを言っていた自分を殴りたい。
とにかく付いて行くことに全力を尽くさないと、ここで遅れると完走すら危うい。
グレガの3人ほど後ろに付いて行く。
今日の「グレガの側に居ろ」というのはアタックに備えてとかでは無く、側に居るだけで限界だろうと見越したうえでの言葉だったのだろう。
最初の登りは8kmで一旦緩やかになるはず。
そこまで粘れれば希望が見える。
現在4km。
マジでヤバい。
自分の位置から見える集団は少人数に分かれてバラバラになっている。
どこからがグルペット予備軍でどこからが逃げ予備軍か判別がつかない。
とにかくグレガを含む自分の前の集団に食らいついて行く。
自分の後ろに選手の気配は感じない。
少なく無い人数が自分の後ろに居たはずだが、散ったのだろう。
とにかくこの集団には付いて行きたい。
しかし自分が今いる集団も1つ前の集団に追いつこうとペースを上げている。
千切れかけたり付き直したりを繰り返しながら付いて行く。
(無理してでも付いて行くべきか?しかし残りの距離がまだまだある。ここで出し切るのはマズイ。でも前に追いつけばペースが落ちるはず。そこまで耐えればどうにかなるか?でも足が相当ヤバい。緩くなるまでの残りの距離は?1.5km!?ヤバい……無理……)
力尽きてブッ千切れる。
やってしまった。
完全に出し切って千切れてしまった。
これはマズイ。
とにかく回復させないとどうしようもない。
自分が思うに、自分の回復力は高いはず。
まだ取り返しは付く。
後ろにはまだ選手が居るはずだし、最悪の場合はそのメンバーとグルペットを形成すればいい。
審判車に抜かれる際に「ヤマモト!ユックリ走って回復させろ」と声をかけてもらう。
後ろから2人の選手に抜かれるが回復しきっていなかったので付いて行かず。
登りが少し緩やかになったか?というタイミングで結構な人数の集団に抜かれる。
これはオイシイ!と思い即座に飛びつく。
あと少しで下りと平坦が来るはず。
この集団に付いて行けばいいペースで前を追ってくれる。
上手く行けば前に復帰できるかもしれない。
先に抜かされた2人を吸収し、そのままの勢いで前を追いかける。
再び勾配が急になる前に前方に形成されたグレガを含む大集団に追いつく。
大集団はペースを落として楽なペースで登っている。
グルペットだろうか?
しばらく息を整えて落ち着いたところでグレガの側に行く。
「この集団はグルペットか?」
「いや、違う。メイン集団だ」
どうりで集団の上空にヘリが飛んでいる訳である。
メイン集団はペースを落としたまま19km地点の1回目の1級山岳を通過。
速すぎないペースで下り、41kmから始まる2回目の1級山岳へ。
登り始めは先ほどの登りと同じく比較的ユックリ。
足にダメージがそこまで来ない。
このままのペースで登り切らないかな?と淡い期待を持ったが、5km程登ったところでペースが上がりだす。
このペースは不味いな……と思いながら集団内を下がって行く。
一瞬ペースが上がっただけか?とも思ったがどうやらそうではない。
ペースアップが始まったようだ。
あと15kmも登る。
ここで無理は出来ない。
単独でも遅れて1人で登っていればその内グルペットに追いつくことが出来ると判断し集団から遅れようとする。
そのタイミングで集団の後ろ3分の1がゴッソリ遅れる。
丁度いいタイミングだったのでそこに合流して登る。
無理の無いペースで登り切って1級山岳を通過。
集団先頭10番手辺りで下りに入る。
前に付いて行くが、その前の選手が中切れを起こす。
上手く前との差を詰めることが出来ず自分も前から遅れる。
何人かの選手に後ろから抜かされ、付いて行こうとするが上手く付けず遅れる。
後ろから選手が来ないので一瞬で後ろを確認するが、後ろも結構バラバラになっている。
自分が下りが下手な訳では無く、自分の前に行った選手がとびきり上手いだけ。
むしろ位置的には自分もそこまで下手な方ではないハズ。
ヘアピンの連続する区間は単独で下り、直線的な下りに入ったところで後ろを待つ。
ダニエル・オスに抜かされて後ろに付く。
重いので下りが速いし、一杯踏んでくれそうだからだ。
案の定、先頭交代の要求もせずに黙々と踏んでいく。
しばらくして後ろから大きな集団が追いついて来てローテーション開始。
下りで先行したメンバーを追いかける。
103kmからの最後の1級山岳が始まるところで前に追いついて1つの集団となって登りだす。
少し足に来るくらいの一定のペースで登って行く。
時々無線からトップ集団とのタイム差の連絡が来る。
山頂が近づくにつれ、打ち切りのタイムリミットまで十分に余裕が有ることが確定的になっていく。
余裕が出来たことで集団のペースが徐々に落ちていく。
余裕のあるペースで最後の1級山岳を通過。
下りに入る。
1車線、ガードレール無し、白線の向こう側は崖、という中々クレイジーな下りを1列になって下って行く。
時間的に余裕があるおかげでそこまで速くは無い。
しかし前の選手の下りが下手で前から遅れ始めている。
余裕があると言っても前から遅れるのは嫌だったので直線的な下りで前の選手を抜いて集団に追いつく。
かなり下りが上手くなっている気がする。
昔と比べて、視線の送り方、見るべきところ、集中力、判断力がかなり上がっている気がする。
調子に乗っていると絶対にこけるので、無理には攻めず自分が「絶対に大丈夫」と思う速度を維持して前に付いて行く。
そしてラスト3kmを切ってから少ししてラストの3級山岳に入る。
ジリオーリに「タイムアウトの心配は無い?」と聞くと「全く問題ない」と教えてくれた。
そこからは集団に付いて行くだけでゴールした。
感想
最初の8kmを耐えれば後はどうにかなると思っていたが、その8kmが半端無く速くて相当キツかった。
それ以降はそこまで苦しむことも無く走ることが出来たので良かった。
感覚的には昨日の方がよっぽどしんどかったという感じである。
明日はトリノへ向かう最終日。
ここまで来れば完走は確定的と言えるが、最後までどんなトラブルが有るかは分からないのでリラックスしつつも集中して走りたい。
今日で全ての山岳ポイント地点を終えたわけだがクネゴの山岳リーダージャージは昨日まで2位につけていたニエベに逆転されてしまった。
本格的な山岳が始まってからは全くと言っていいほどクネゴのアシストが出来ていなかったので申し訳なかった。
自分に対してのジロのこの山岳でのアシストは期待されてなったとは思うが、いずれは期待されるような選手になりたい。
キツさレベル
7
スタート直後のペースアップが半端無く辛く、出し切って千切れてしまったが、その後に復帰することが出来て良かった。
それ以降は限界を越えないレベルで走りきることが出来たので全体としてはそこまで辛いとは感じなかった。
しかし134kmのレースとは思えないほどに長く感じたのは確かであった。
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