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COLNAGO V3RS レビュー

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今シーズンからキナンレーシングチームの駆るバイクがコルナゴになったのは、これまでを知っている人からすれば衝撃的だったと思いますし、今ここで知った人にとっても衝撃的だと思います。
今回は今シーズンから使用することとなったコルナゴの半年間使用したうえでの詳細なインプレッション的な内容になります。



言わずと知れたイタリアのフレームメーカーであるコルナゴ。
最近の方にとってはポガチャルを始めとするチームUEAの活躍が印象強いかもしれませんが、昔から知っている方が浮かべるイメージとしてはオシャレなイタリアブランドのハイスペックなバイク、という印象がかなり強いと思います。
なんだかんだ言って自分も31歳、コルナゴに浮かべるイメージとしては後者の方が強かったりします。
また、自分が高校時代に自宅からかなり近い位置にあったロードバイクショップであるユーロワークスさんがコルナゴをメインで取り扱っていたこともあり、憧れを持つと同時に高級バイクという印象がかなり強かった思い出があります。
当時のコルナゴと言えばかなりハイセンスなペイントが目立つラグ組みの綺麗なフレームだったのを覚えています。
自分の実家は子供のスポーツ活動に関して積極的ではありましたが、決して裕福なわけでは無く自分の競技人生の中で新車を買ってもらえたのは高校2年生の途中で1回だけで、それまでは中古のバイクを乗り換えていました。
新車も新しいのはフレームセットだけでパーツはそれまでのバイクに付けられていた落車で削れたアルテグラを乗せ換えたといった感じでした。
なので、そのころはコルナゴの新車に乗るなんて全く考えられず、憧れは憧れのまま、将来趣味で乗る際には金属製の細いフレームのコルナゴに乗ってみたいな、ダブルレバーなんかも趣があって趣味で乗るならいいよね、といったイメージを漠然と持っていました。

そんなこんなで月日は流れ、なんの巡りあわせか今シーズンからチームで使用する機材がコルナゴのV3RSになりました。
憧れのバイクでレース活動ができるようになったわけです。選手は長く続けてみるものですね(笑)
というわけで、かれこれ半年以上V3RSでトレーニングを行い、レースでガッツリと高強度とハイペースでの実戦も経験していますので、レースベースで捉えたコルナゴの印象を紹介します。

バイクを乗り換えた際には基本的に以前のバイクのポジションを引き継いで再現するわけですが、ジオメトリが違うこともあり完全な再現というのはかなり難しくなります。
ですから、バイクが変わった際にはポジション出しというのを一から行う必要があります。
フレームの剛性感や踏み込みの反応によってサドルの高さや角度も変わりますし、振り感によってハンドルの高さやブラケットの角度も大きく変わってきます。
そういう面において、以前のフレームを基準に組んだポジションの際にはV3RSの印象はかなり癖の強いフレームだと感じていました。
具体的にはバイク自体が直立しようとする力が非常に強く、それがゆえに剛性感が高く踏めば進むものの中々に振りにくい、という印象が強かったのです。
これはV3RSのフォークがかなり寝ていることに起因する強みなわけですが、捉え方によっては『癖』となるわけです。
初っ端からマイナスイメージが付く内容ではありますが、ここで自分が伝えたいことは『他フレームのポジションを流用するとV3RSは高剛性の癖のあるフレームに感じる』という点です。
一般的な試乗会においては様々な制限があり、長時間かけて各自にあった独自のポジションを出すことは難しいため、それまでのフレームに似たポジションで試乗することになります。
つまり、基本的に試乗会でV3RSに持つ印象としては「剛性感と癖のあるフレーム」だろう、ということが予想できるわけです。
これを最初に紹介しておかなければ、自分がここからフレームの印象を語ったところで「でも自分が試乗した時には印象が違ったし……」となってしまい、齟齬が生まれるわけです。
そんなこんなで、今シーズンのポジション出しには結構な時間がかかりました。具体的には2週間くらいです。
基本的に自分はバイクのポジションを弄らない派ですので、前のバイクのポジションでしばらくは我慢して乗っていたのですが、どうにも納得できず最初はハンドル周りの調整から入り、そこからサドル周りの調整に移った結果、初期に感じていた癖は無くなり、印象が180度変わったと言えます。

現在の印象としては「恐ろしく体と一体感のある、思い通りに走るバイク」といった具合です。
まず、シッティングポジションにおける踏み感に対しては極端な高剛性は感じません。
力を確実に受け止めつつヌルヌル走る、という印象です。
基本的にどんな踏み方をしていても進んでくれるのですが、個人的には高ケイデンスの方の進みが良いように感じます。
もっとも、高ケイデンスで無駄のない踏み方をしているとバイクが進みやすいのは当然っちゃ当然ですので、その特徴が表れているだけ、とも捉えられます。
ダンシングに関しては前荷重でダンシングした際の進み方が異常です。
開発者や設計者ではないので原理は分からないのですが、重心を前に寄せたダンシングの際に後輪からの押し出される感覚がかなり強く、明らかに進みます。
特に激しくバイクを振る必要もなく、体重を乗せて踏むだけでキリキリと反応して走ってくれます。
スプリントやアタックのような高負荷のかかる踏み方をした際の進み方も非常に綺麗な印象です。
登りのような低速でのダンシングは前荷重の進みの印象が強かったですが、時速40kmを越えるような高速域でダンシングしている際には重心の位置は関係なく踏めば進みます。
低速域からの加速力も強いですが、高速域からスプリントを仕掛けた際の加速力も自分の脚の力に素直に、力を逃がすことなく推進力に変えてくれている印象を受けます。
フレームの振動吸収性が高いからなのか、路面の状態をしっかりと感じることが出来るのと同時にタイヤのグリップ感をダイレクトに感じることが出来ます。
具体的にはコーナーでの安定感と路面に食いついている感覚を実感しやすいため、下りやコーナーで余裕が生まれます。
また、フレームの空力が良いからか、コーナーリングの最中にブレーキをリリースした瞬間から自然と再加速が始まっているのを感じることが出来ます。
と、まぁ、ここまでは自分がトレーニングにおいて一人で走っている際に感じたフィーリングになります。
しっかりと自分に合う、走りやすいポジションを見つけた際に試乗では分からない部分が見えてくる、という話です。

しかし、試乗で感じる感覚とポジションを合わせた際の感覚が違うのと同じように、実際にレースで使う場合には感覚が変わることが多々あります。
これは断言できることですが、レースで使用するバイクの本当の意味での良さはレースで使用しないことには分かりません。
ハイペースな中で高負荷を与えた際にバイクがどのような反応や挙動を示すのか?というのは軽い試乗程度では全く分からないからです。
試乗の際に時速40kmを越える速度で走ったり、その中での急制動や、立ち上がりでの全力の踏み込み、なんてことは雑にポジションを合わせた程度ではできませんし、そもそも気を使ってしまい軽く走る程度しかできないでしょう。
そういう面もあり、試乗や普段のトレーニングでは分からない部分が原因でいざレースで使ってみると、良くも悪くも普段乗っている感覚と違う、なんてことが起こりうるわけです。

V3RSを実際にレースで使用してみると、思っていた以上に速かったです。
普段のトレーニングの時点で踏んでいる感覚に対して景色の流れが速いため、速いな、とは感じていたのですが、レースで他の選手と走るとより一層速さが際立ちます。
具体的には集団走行時に他選手の後ろに入った際に明らかに出力を低下させることができ、休めます。
おそらくフレームの空力がかなり良いようで、下りで脚を止めている場面であっても他の選手より伸びているのを感じます。
その状態で時速80kmを越えているような状態であってもバイクの挙動が非常に安定しているため、全く無理をすることなく下りで他の選手を抜ける、抜いてしまう、という場面が何度かありました。
高速で下っている際にはよほどの大ギアを付けていない限り回して加速させることはできないため、それ以上の加速はできていませんが。
スプリントのかかりも非常に良かったです。
自分はゴールスプリントに絡んではいないので中間スプリントでの争いになりますが、踏みだした瞬間に加速し、抜きにかかり風を浴びても失速せず、そのまま乗せた勢いを持続させることが出来るため感覚的にはイメージより50mほど手前から仕掛けに行っても十分に粘れるように感じました。
もっとも、かかりに自信があるのであれば、出来る限り計測線まで引っ張って勝負を仕掛けるのが最善であることは言うまでもありません。
そして、自分が一番フレームの良さを一番実感したのはアタック合戦で反応している時です。
他の選手のアタックに即座に付く際の反応の速度、少し離れた選手へのブリッジの際の伸び、アタックする選手にベタ付きした際の楽さ加減、動いた後に集団内で脚を休める際のパワーの削減、など、どの場面においてもフレームの良さが出ており、自分の感覚以上の動きが出来るようになります。
そのおかげで動きの幅や試行回数をより多く増やすことが出来るため、結果としてチャンスを掴みやすくなるわけです。

バイクの挙動としては乗り手の意思通りに非常に素直に動いてくれる印象があります。
タイヤのグリップ感をダイレクトに感じれると紹介した部分も含め、バイクシステム全体だけでなく乗り手も含めた一体感を感じています。
自分の足で直に路面を踏んでいるように感じることが出来るため、コーナーリングの際に攻めすぎて仮に後輪が滑ったとしても、自分の体のようにバランスを整えてすぐに立て直すことが出来るだろうという自信を持てます。
今のところ後輪が滑るような事態にはなっていないので実戦はできていませんが、感覚的に安心して曲がれる、ということです。
あとはコーナーリングの最中に余裕があることで走行ラインを無理なく変更して動くことも可能です。
下っている際に自分のコーナーのライン上に遅い選手が居る際に無理なく抜きに行ける、という感じです。
バイク自体に癖を感じないため、全体的な方向性に関してはホイールの選択しだいで印象を変えることが可能です。
いうまでもないことではありますが、安定感を出したいのであればディープホイール、振りの軽さを重視するのであればローハイトといった具合ですね。
自分はフロントをディープであるSPEED55にして安定感を出しつつ、リアを低めのSPEED40にして踏んだ際の軽さも感じれる組み合わせにすることもあります。

フレームが硬すぎると一般の人は脚にダメージが蓄積しやすく長距離を走りにくいというイメージがありますが、このフレームの剛性感は自分としてはそこまで高いとは感じませんでした。
自分の場合はトラックレーサーにも乗っているので、特に高剛性と言われるトラックフレームとは明らかに剛性感が違いますし、これまで乗ってきたフレームと比較しても特段硬いという印象は受けなかったです。
そのあたりの剛性感というのもバイク全体のトータルバランス的な部分はあるため、ホイールの選択次第で全体の印象を変えることが出来ますし、個人的にはタイヤの空気圧を下げれば簡単に全体の剛性感を調整することは可能だと感じています。
それでも剛性が高いと心配という方には、同じフレーム形状で使用されているカーボンが違うだけのV3という選択肢もあります。
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