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2023全日本選手権ロードレース

クラス:ナショナルチャンピオンシップ
開催地:修善寺CSC
日程:6月25日
距離:160km








天候:晴れ時々曇り
出場チームメイト:畑中勇介、山本元喜、新城雄大、孫崎大樹、白川幸希、花田聖誠、宮崎泰史


レースレポート

今回の全日本選手権は最終リザルトで自分が3位という結果だった。
優勝は大喜、2位は岡選手、という形でチーム右京にワンツーを決められた結果になる。
個人の力的に、チーム力的に負けた形にはなるが、自分の願っていた展開で自分にベストな形に持ち込んでの勝負となったため、満足ではないが納得のいく結果となった、というのが今回のレースの自分の感想であったというのをまず初めに紹介しておきたい。

今年は全日本選手権のコースが修善寺に決まった、という時点でリザルトを出すことに対してかなりの難しさを感じていた。
獲得標高が5000mになるかつてないハードな今年の全日本では地脚があることが大前提になり、レース中の駆け引きの要素はかなり少なくなると考えられた。
自分の走り方の根底部分としては地脚はあるものの、自分以上に地脚のある他の選手に対して、展開であったり状況、メンタル的な部分において優位に立ち回り微妙な差で勝ちに行く、という部分があるため、その自分の優位性が潰されるというのは中々に辛い部分ではあった。
それらを踏まえて、今年は全日本に向けて個人の力を最高の状態に引き上げれるように諸々の準備を済ませ、完全に仕上げた状態で挑めるように準備した。
具体的には、普段は体重を絞らないくせに、ツール・ド・熊野後からの3週間で2kgもパワーを維持したまま絞り上げたし、機材に関しても直近で発表になったSPEED42を自前で用意した。
補給食の効率であったり、タイミング、内容に関してもトレーニング中からテストを続け、TOJ、熊野、で実践を重ねた結果、自分に合った最適な方法を導き出し、それに伴い捕食の軽量化とレーサーウェアをトラック用のワンピースを使用することでエアロの面も強化するという手段を取れた。
ここまでレースに向けて準備を整えたうえで挑むことになったが、それでも中々勝ち筋、というかリザルトを残す手段というものが明確にならなかった。

というのも準備を万全に整える段階で各レースでの走り方を含めたリザルトから、今年の全日本に向けてのおおよその各選手の力量というものを計っていた。
結果として、やはり幸也さんは外すことが出来ず、セオリー通りのレースを展開された場合にほぼ確実に勝ち目がない、と考えていた。
ジロ後に体調を崩していた、という本人の話ではあったが、アジア選手権の走り方とリザルトを見る限り明らかに別格の脚を持っていることは分かっていたし、最警戒であった。
そして個人としてもチームとしてもチーム右京も非常に強力、というのは確実。
絶好調の大喜と岡選手だけでなく、小石選手、そして復帰直後ではあるが、増田さんもコンディションを上げている可能性が高く油断できない。
個人的には右京の選手に対しては岡選手以外であればゴールスプリントまで1対1で持ち込めればギリギリ勝てる可能性があるとは、感じていたがその前に登りで引きちぎられる可能性も高く、また、状況的に多対一になった場合にお手上げの可能性も考えられた。
そして地脚があり登れている、小林海選手と金子宗平選手。
この上記7名が自分の中での警戒すべき選手であり、このメンバーにどうやって勝ちに行くか?というのが自分の中での課題となっていた。

かなりの時間をかけてプランを練ってはいたものの、答えは出ず。
どのプランであってもリスクはあり、失敗した際に結果が出なくなる可能性が存在していた。
そんな中で諸々考え続けた結果、最終的には「逃げしかないかな?」というのが自分の答えになりつつあった。
どのプランでも相応にリスクがあり、失敗する可能性を含んでいるのであれば、自分の一番得意とする展開で、自分の勝ち筋を押し付けに行くというのが答えなのかな?と。
それにしても、当然リスクは存在しており、一番大きな部分は脚を使いすぎてしまう、という点であった。
今回のレースは序盤の地味な消耗ですらレースが進むにつれ大きなダメージになっていくということが考えられたので、序盤でいかに高出力を出し過ぎないか、というのが重要だと認識していた。
つまり、高出力を極力抑えつつ逃げを狙いに行く、という相反する課題をこなす必要があり、これが中々難しい。
力づくで逃げを狙いに行って潰されてしまうと無駄足として大ダメージになるし、当然時々自分が陥ってしまう逃げを必死に狙いすぎてのアタックの打ち過ぎはイコールでレース終了になる。
そして、仮に逃げに入れたとしてもメンバーの脚が無ければ逃げ集団はメイン集団に追われるまでもなく、自分たちで勝手に消耗して爆散後、各々集団に散って帰っていく、という最悪の展開が考えられた。
そして、これがかなり重要ではあるのだが、仮に逃げに入れたとしても、力で無理やり作られたような逃げ集団であれば必然的に幸也さんが加わっているはずなので、勝ち目が無いから逃げは潰すことになる、という部分があった。
つまり、自分が狙う逃げ、というプランは「最後まで逃げ切れる脚のある選手が複数含まれる逃げ集団に極力脚を使うことを避けつつ加わりに行く、しかも登りの激しいコースで、かつ幸也さんを外して」というかなりの無理難題であった。

その分、メリットも十二分にあった。
人数を揃えているチームがそれぞれに選手を逃げに送り込んでいれば、集団を牽引できる人数が絞られるためタイム差が広がりやすく、逃げ切りの可能性が高くなるというのはかなり大きい。
また、幸也さんを最警戒している選手も多く、幸也さん自身がレースを動かし始めない限り、メイン集団が失速し続けるという可能性もかなりあった。
加えて、これが自分がメイン集団に居たくなかった最大の理由でもあるわけだが、メイン集団が逃げを追いあげる際に、チームの人数が少ない選手は少しでも他のチームにダメージを与えつつ追いつきたいはずであり、その結果、インターバルを繰り返しながら逃げを捕まえることで全員が疲労困憊の状態で終盤に突入するという展開、この場合、逃げで淡々と進めている方が有利になるはずであった。
仮にチームの人数は少ないが脚のある選手たちが協力して一定のペースで逃げを捕まえた場合、人数を残しているチームからカウンターアタックの連続という袋叩きにあう、という光景は簡単に思い浮かべることが出来た。

ここまでの前提を踏まえてレース展開の話へ。
基本的には逃げを優先する考えではあったが、それが叶いそうにない場合には集団からの絞り込みの展開で勝負するしかない、という覚悟はもって挑んでいた。
逃げに固執してしまい脚を使うだけ使ってレースにならない、というのが一番最悪の展開。

スタート直後からすぐに先頭に上がり、動きを見つつ対応できるように備えていた。
アタックがかかるものの最序盤はみんな脚があるので反応することが出来るし、お互いにかなり警戒している雰囲気が強く、連続してアタックを繰り返すような激しい展開では無かった。
意外だったのは、登りでペースが落ち着いたタイミングで増田さんが先頭に出て集団をコントロールし始めたことだった。
明確にアシストに回る動きだったので、今回のレースは自力では狙いに来ないのだろう、という事が読み取れた。
そして岡選手の動きも無理に逃げを狙いに行っている感じが強く、集団の絞り込みに耐えてゴールスプリントに持ち込むという正攻法でないように見え、岡選手もアシストに近い動きをしているな、と感じた。
そうなると右京は大喜と小石で狙ってくるのだろう、という事が1周目の時点で読み取れた。
2周目に入った直後に岡選手がアタックを仕掛けたことで10名近くが抜け出したが、アシストの動きが強すぎたように見えたので、いったんはスルーした。
登りで無理に反応すると脚を使いすぎてしまう、という部分もあった。
右京が抑えにかかる動きをしていたので、その横を抜けて山頂部分で先頭からアタックし、下りを攻めた結果、大喜だけが反応しており、2人で中途半端に逃げとメイン集団の間にぶら下がる形になっていた。
少し悩んだがメイン集団が止まる可能性を感じたので、大喜に「前行くかぁ」と声をかけて登りで踏みなおして逃げ集団に合流した。
逃げにはキナンから孫崎と花田が乗っていたが、序盤の動きの激しさもあり早々にドロップしてしまい、自分だけが残る状態となった。
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他にも逃げには入ったものの脚的に辛い、という選手が多く、一気に8人にまで逃げの人数が減った状態でレースが進んだ。
メイン集団とのタイム差はかなり勢いよく広がっていき、5分以上まで一時的には広がった。
逃げ集団もある程度のアドバンテージを稼げたことでリラックスしながら逃げていたが、このアップダウンが激しくタイム差が詰めにくいであろうコースで5分差はかなり危険だと認識されたことで、瞬間的にタイム差が詰まることが何度かあった。
逃げ集団も簡単に捕まるつもりは無かったので、ペースを調整してタイム差を広げるためにペースアップを行っていた結果、ラスト8周では自分、大喜、岡選手、石上選手の4名に絞れらてしまっていた。
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逃げる動きにはメイン集団に追いつかれた際に余裕を残していることで次の動きに合わせられる、というメリットがあったわけだが、逃げの人数が少ないと各々の消耗が激しくなり、追いつかれた際に疲労しすぎている可能性があった。
そういう面で、ラスト8周で4名というのは思っていたよりも早く人数が削られ過ぎてしまっており、少し心配な部分があった。
メイン集団の状況は定期的に各チームのチームカーから伝えられており、中盤までは逃げに乗れなかったチームや千切れたチームが協力して追っていたものの、中盤以降は絞り込みを加えつつの力づくの追いに変わっている、という情報があり自分の予想通りではあった。
こうなってくると、タイム差は詰まりにくくなるし、追いつかれたとしてもかなり疲労している可能性が高く、チャンスが近づいている感触があった。
しかし、逃げの4人としても難しいところで、逃げ切りになるのが一番都合がいいものの、無理に逃げ切ろうとして消耗しすぎると捕まった際に不利、逃げ切った際に4人の中で勝負になるので脚を使いすぎても不利、しかし、ある程度は踏んでいないと捕まってしまう、という絶妙なバランスの上に成り立つ協調関係であった。
余りにもタイム差がつまり過ぎた場合には少しペースアップを計り、タイム差を広げなおしていたが、10km10分の法則に従って考えると、逃げ切りが確証できるほどのタイム差までは中々広がらなかった。
登りと下りしかないコース、メイン集団も消耗している、と考えるとタイム差を詰めに来るのは厳しい部分があったのかもしれないが、慎重派の自分としては全く油断できる状態では無かった。
そして逃げの助教として、自分としては4人中に大喜と岡選手が右京で2人、という状況が非常に厄介だった。
仮に逃げ切りを確証できたところで、早めからアタックをして仕掛けても岡選手と大喜に見送られて泳がされた場合に、自分だけが消耗してしまい優勝争いから落ちる展開が全然あり得た。
かといって、4人のままゴールまで持ち込んでも、大喜と岡選手に交互にアタックされて負ける落ちだろうし、ゴールスプリントに持ち込まれると岡選手の方が有利。
そういう部分を含めて考えると、ラスト1周で仕掛けるしかない、というのが自分の考えだった。
全開で踏み切れるギリギリまで距離を削って、かつ逃げの4人が均等に消耗している状況で押し切るしかない、と考えており、それで頭がいっぱいになっていた。
逃げ切りがほぼ確定的となったラスト2周に入った後に、石上選手からアタックを仕掛けたのはかなり以外で虚を突かれた。
勢い的には捕まえられると自信を持てたので少し待ち、岡選手が反応するのに付いて行き、追いついたタイミングで自分の後ろにいる大喜を振り返って確認すると居なかった。
瞬間的に「千切れた?」と安易な考えに至ってしまい、一瞬油断して前を向き直った瞬間に、振り返った逆側から大喜がアタックしていることに気が付き、急いで反応した。
石上選手と岡選手は引き離し、自分と大喜がそれぞれ独走する状態で下りへ。
反応が遅れたこともあったが勢いが良かったので、反応できていても付けなかった可能性はある。
しかし、ここで遅れては確実に逃げ切られると確信していたので、3kmコースを下り切った後の登り返しで全開で踏んで大喜を追った。
45秒間500wで全開で踏み、あと数mというところまで迫ったが、最後の一押しが届かず離れてしまった。
オールアウト気味にまで追い込んでしまったせいで直後に一気に差が広がってしまい、30秒ほど開いてしまった状態で再び踏みなおし、差をギリギリ維持して大喜が失速する可能性にかけていたが、むしろ終盤には加速していた様子。
それなら2位を、と頑張っていたがラスト1周に入るタイミングでは石上選手をしっかりと突き放してブリッジをしてきた岡選手に追いつかれた。
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大喜が前にいる以上、岡選手が牽く意味は全くなく、無駄な問答をするつもりもないので交渉はせずに自分が前で淡々と牽き続けた。
このままいけば最後に岡選手にスプリントを仕掛けられて3位になることは分かっていたが、千切れたとはいえ石上選手も後ろにいることでペースを緩めすぎると追いつかれる可能性があり、牽制することもできず。
ラスト半周あたりで大喜と45秒、石上選手と45秒、とチームカーから伝えられ、これは2人で2位争いは確定、と認識しつつ、残りの距離を減らしていく。
ラスト2kmの急勾配でアタックを仕掛けて引きちぎるしか2位に入れる可能性はない、と判断し、すこしペースを落として脚を確実に残しつつ最後の登りを登っていき、ラスtお2kmあたりから全開でアタック。
引き千切ってやる!と14秒間700Wで全開で踏み切ったが、数mしか離せず、頂上を通過し下りへ入った。
頂上から下りにかけて、常に車間を切って数m後方でいつでも勢いを付けてアタックできるように備えられており、流石にレースを理解しているよな、と感じながらラスト500mを切る。
登り返しとほぼ同時にアタックされ、当然付けず、突き放される。
しかし、アタックした先で明らかに岡選手が踏めなくなっており、思いっきり失速している。
自分が追いつくのを待っているのか?というくらいに失速していたので、踏めば再度抜ける!と分かってはいるのだが、自分の脚も限界で岡選手と同様に完全に止まっていた。
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余りに脚が止まり過ぎていて、石上選手に追いつかれるのではないか?と心配になるくらいに失速しながらも。なんとかゴールまで辿り着き、3位でレースを終えた。


感想

前提条件から個人的にかなり厳しいと感じている中で、自分にできる最大限の努力と力を使い切ることはできたと思う。
当然優勝したかったが、脚的にも展開的にも全て出し切って今回の結果だったので、どうしようもなったと素直に結果を受け入れられている部分がある。
負けはしたが、気持ちのいいレースだったと思う。
圧倒的な差で負けたというよりも、あと少しの差だが、確実な差で負けた、という感触があるので、再度仕上げて来年の全日本で優勝を目指して頑張りたい、と思える。
あと、個人的には今年で32歳になるオッサン組に分類される立場ではあるが、まだまだ頑張れそうな気配を自分自身に感じた。


キツさレベル
10
途中で攣りかけることもあったし、最後はほぼ独走状態でゴールまでヘロヘロで辿り着いたこともあり力の全てを出し尽くした。
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COMMENTS

1 Comments
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お疲れ様でした。
レース感動しました。ありがとうございました。

2023/06/27 (Tue) 19:29 | EDIT | REPLY |   

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