ジャパンカップ
ジャパンカップ
クラス:HC ワンデーレース
開催国:日本
距離:144.2km
天候:晴れ
毎年お馴染みの宇都宮の森林公園を周回するレース。
今年は昨年まで使用していたコースの一部が使用できなかった為昨年まで最終周回でのみ使用していた10.3kmのコースを14周するコースに変更されていた。。
レース前のミーティング
自分への指示は逃げに乗る必要は無いから、最終局面まで残れるようにクネゴの後ろに絶対付いて行くようにという指示。
クネゴからはラスト1周に入ったところでアタックに行け!と言われていた。
レースレポート
全員で少し早目に並びに行くと1番乗りだった。
しかし先頭には並ばず2列目辺りになるであろう位置に居たクネゴの側にいることにする。
レース前にも話していたが、毎年スタート直後の登りでペースが上がってキツイという事で、アタックはしないができる限り集団前方でクリアしたいという事だろう。
その内スタートラインに選手が増えていき、号砲と同時にレース開始。
パレード走行は無し。
スタート直後に数名が飛び出していく。
自分は集団先頭の様子が十分うかがえる位置に居るが、今回は逃げる必要は無いという事だったので見るだけで反応しない。
毎年の感じでは1周目の古河志林道では決まらないはず。
しかし、数名が飛び出した直後先頭付近にいたワールドツアーチームが道を塞いで逃げを行かせる。
道が狭いこともあり誰も抜け出せずそのまま逃げが決まる。
スタートで飛び出したメンバーがそのまま逃げになった感じ。
逃げが決まれば登りのペースが落ちるので楽が出来ていい。
しかし、もし自分に逃げろという指示が出ていたらと想像すると、予想に反してあまりにも早く逃げが決まってしまったので反応していなかった可能性が高く、中々怖い展開だったと思う。
もっとも、逃げの指示が出ていない今回に限っては早く決まった方がアタック合戦により続くハイペースが無いため足を温存できるので良かった。
クネゴの側を維持しながら登るが集団前方はユックリなペースながらも地味に激しい位置取りが繰り広げられている。
まだ開始直後でもあるし、そこまでシビアに位置取りをしなくてもいいだろうと思いクネゴの見える位置で登りをこなす。
登り切って下りに入る。
集団先頭付近は綺麗に1列になってかなりいいペースで下りに入っていった。
自分の居る辺りは集団が密集していたこともあり2列ぐらいで争うように下りに入る。
その中でも下りが上手い選手が無理やり抜きに来たり、下手な選手で中切れが起きたりとかなり大変。
ほぼ下り切ったころには集団がいくつかに分断されていた。
後ろの集団に入ってしまった選手は急いで先頭に追い付こうと踏むためかなりのハイペースで前を追う。
自分は中盤辺りの集団だったが、それでも先頭に追い付いたころには結構疲れていた。
後方で下りに入った選手の事を考えると、この下りだけでかなり足を使うことになるだろう。
次の下り以降は多少無理をしてでも集団の前方で下りに入る必要があるだろう。
集団は平坦区間でペースを落として逃げとのタイム差を広げる。
ある程度タイム差がある方が、逃げ集団メイン集団共にペースを安定させることが出来るのでレースをコントロールしやすくなるからだろう。
2周目に入る。
相変わらずペースは緩いままだが、位置取りは先ほど以上に激しいようにも感じる。
前の周の下りで痛い目を見た選手が何としても前方で下りに入ろうと必死なのだろう。
クネゴの真後ろをキープしようと頑張ったが結局離れてしまい、少し離れた位置で下りに入る。
下りのペースが前の周よりも速いように感じる。
下りで後ろの足を削ろうという作戦なのだろうか?
急なコーナーの連続する区間を抜けて、少しコーナーが緩くなりだし速度が上がる。
少し深めの右コーナーで落車が発生したのが自分の位置から見えた。
しかもNIPPOの選手もコケていた。
止まる為にペースを落として寄っていくとオレンジのバイクが目に入る。
クネゴが落車していた。
その先ではベルラートも落車していて右腕を抑えている。
クネゴのジャージの右の肩と腿の部分がガッツリ破れており擦過傷も酷い。
しかし何より、首の後ろを押さえてかなり痛そうにしている。
首を押さえることが出来ていることから神経系は大丈夫そうではあるが、再スタートが出来る様子では無い。
デネグリとニーバリも一緒にチームカーが来るまでその場で止まって待つ。
NIPPOのチームカーが止まり、ニーバリが「ドクターが必要」と叫んで伝える。
再スタートできないという判断でデネグリとニーバリと一緒に再スタートする。
車列も利用しながら周回コースのラスト3km辺りの地点で集団の最後尾に追いつく。
デネグリに「前に上がるか?」と聞くと「俺と一緒に動くように」と言われる。
クネゴの復帰が望めない以上デネグリの指示でレースを展開していく必要がある。
しかし、デネグリも日本に来てから体調が良くなく本調子ではない。
ニーバリも絶好調とは言い難くNIPPOにとってかなり厳しい状況になってしまった。
自分は今のところ調子が良いように感じる。
とにかく今残っている選手で展開しなければいけない以上絶対に無駄足を使うことは出来ない。
今までより相当集中力を上げてデネグリの後ろを全力で死守する。
集団が比較的ゆっくりだったこともあり追いつく際の疲労も比較的軽くで済んだ。
追いついてからもいい感じで休むことが出来た。
その後、デネグリはタイミングを見計らいながら前に上がっていき、登りが始まる頃には集団の先頭を固めるワールドツアーチームの真後ろの位置につけていた。
デネグリは登りに入ってもかなり密集した集団内でその位置をキープして登る。
自分も離れないようにして登るが、下りの手前での位置取りは相当強烈。
無理をし過ぎて落車しては意味が無いので少し離れた位置で下りに入る。
下り切る手前で相当集団が伸びる。
自分も前から自転車1台分くらい遅れながらも前に必死で付いて行く。
集団のペースが緩み落ち着いたところで振り返ると相当後ろが離れている。
やはり後ろに取り残されると復帰に足を使ってしまって徐々に披露してしまうだろう。
そこからの数周はより一層集中してデネグリの側をキープするようにする。
下りは回数を重ねるうちに慣れて来て前から離れることも少なくなっていった。
しかし何周かに1回は山頂での位置取りに失敗し遅れた集団に取り残されることが有った。
遅れた集団に入った際には、中切れした選手が前との距離を詰めるまで絶対に前に出ないように気を付けた。
ロードレースの暗黙の了解としてコーナーなどで中切れを起こした選手は前と詰めなければいけない。
中切れを起こして交代するような選手は相当ひんしゅくを買う上に怒鳴られることも良くある。
逃げとのタイム差も徐々に縮まっていき、ラスト5周前では1分半程。
このタイム差と集団の力から考えるにいつでも捕まえることが出来る状態だろう。
予想どうり少ししてから、集団のペースが再び緩み逃げとのタイム差を調整し出した。
ラスト5周に入り登って下りきる。
交差点を左に曲がり緩やかに登りだす。
ラスト4周まで3km程の地点。
ブリッツェンが何か作戦を立てて話し合っている。
何か仕掛けようとしている様子。
4周まで1km程を切った地点で、ブリッツェンが固まって集団左側を上がっていく。
そしてそのまま4人でアタック。
そこにアンカーの初山さんが反応して飛び出していく。
残りの距離からして逃げ切りはマズありえない為ここは反応しない。
ワールドツアーチームが動きだした際に反応する為に前の動きに集中する。
集団からは前のアタックに追加でブリッヂをかける動きは発生せず。
ランプレが先頭で列車を組んで逃げを潰しにかかる。
一気にペースを上げるのではなくある程度のペースで潰しに行く感じ。
登りも本格的に踏み始めているようで中々足に来る。
千切れるほどではないが、ここまでのレースで足に疲労が溜まってきていることは感じる。
登り切って下りに入る。
速いペースで登っていたため集団が伸びた状態で下りへ。
位置取り争いが起きなかったおかげで良い位置で下ることが出来た。
集団はペースを落とさず進んでいく。
恐らく下りで集団の先頭から遅れたメンバーは、復帰するのに相当足を使う状況だろう。
このタイミングで1度でも後ろに下がってしまっては、もう前には戻って来れないだろう。
あとは千切れるだけである。
そうならない為にも集団前方を維持でもキープする。
そのままラスト3周へ。
この登りはかなりペースが上がる。
自分の限界に近い勢いで登っていく。
頂上が近づくにつれ集団がさらに伸び、遅れそうなワールドツアーの選手が自分の前にも増えてくる。
もしかしたら、下りで追いつくつもりで若干遅れているのかもしれない。
しかし、自分には下りで先頭集団との差を詰めるテクニックは無い。
前に残る為の選択肢は先頭集団に付いて行くというものしかない。
遅れそうな選手を抜いて先頭集団に食らいついて行く。
相当足がキツイ、ここでこんなに踏んでしまっては最後まで残れるかは分からない。
しかし、ここで踏まなくては確実に遅れることは分かっている。
出し惜しみせずに踏み耐えて先頭から十数番手で山頂を越える。
集団はかなり良いペースで下る。
ここでビビッて遅れてしまっては登りで踏んだ意味が無くなる。
集中力を総動員して全力で付いて行く。
前の選手のブレーキのタイミングとコーナーに入る速度を合わせて差が開かないようにする。
コーナーでのライン取りも完全にトレースした上で重心を安定させて曲がる。
前の選手が曲がれている以上自分が落車することはあり得ないと自分に言い聞かせて下っていく。
急な下りが終わったところで、少人数とはいえ伸びていた集団が各自、差を詰める為に加速していく。
自分も前の選手から遅れない為に全力で踏んで付いて行く。
無事に集団の先頭に追い付く。
先頭集団で下り切ることが出来た。
集団は20人ほどになっている。
後ろを見るとかなり離れて登りと下りで遅れた選手が追って来ている。
その後後ろからの選手が追いつき、逃げもすべて潰れたことで集団のペースが一瞬緩む。
それも束の間、キャノンデールの選手のアタックによって数名のワールドツアーチームの選手が飛び出す。
最終局面に向けてレースが動き出した。
デネグリも「ゲンキ行け!」と言っている。
「分かった」と言いながらデネグリの横を抜いて集団の前方へ上がる。
上がっている最中に見た感じではこの飛び出しは逃がしたくないようで集団が追おうとしている。
このアタックが吸収された後に動いた方が良いかもしれない。
そこで丁度大きな通りに出る左の直角コーナーに入り先頭に出れなくなった。
コーナーの立ち上がりの速度もかなり速い。
完全に捕まえるつもりだろう。
案の定飛び出したメンバーは集団に吸収される。
集団内の様子を伺い、アタックしそうな選手を探す。
自分単独のアタックでは何の可能性も無い。
誰かアタックしそうな選手を見つけてそこに反応するしかない。
集団内を見ていると先ほどの飛び出しのきっかけを作ったのとは別のキャノンデールの選手が怪しい。
もしかしたらキャノンデールはチームとして逃げの展開に持って行きたいのかもしれない。
その選手の真後ろに付いてマークする。
ジワジワと先頭に上がって行く。
そしてアタックした!
予想通り飛び出した。
そこにピッタリ付いて一緒に飛び出す。
しかしかなり速い。
後ろに付いているだけでも相当足に来る。
どこまで前を引けるか分からない。
キャノンデールの選手はかなり長めに引いて交代する。
後ろを確認すると飛び出しているのは自分達2人だけ。
集団は若干離れている。
どこまで行けるかは分からないが逃げれる!
そう確信して先頭で踏んでいく。
この飛び出しを逃げにするためにも限界ギリギリまで力を出して少しでもタイム差を広げることが出来るように頑張る。
それでもキャノンデールの選手ほどは引くことが出来ず交代する。
大きな道を左に曲がり森林公園へ向かうアップダウンの区間に入る。
キャノンデールの選手はそこまで踏んでいる様子では無いが自分にとっては相当キツイ。
千切れてしまいたいと思ってしまう程。
そこでバイクが上がって来て集団とのタイム差を伝えてくれる。
12秒。
わずかではあるが確実に逃げれている。
頑張るしかない。
少しでも長く逃げれるように先頭を交互に引いて行く。
確実に自分の方が引いている距離は短いが文句を言わずに交代してくれるキャノンデールの選手。
優しい。
そのままゴールラインを通過してラスト2周へ。
ゴールライン通過後の登りを引くが、相当足に来ていてペースがかなり遅いように感じる。
やはり遅かったようでキャノンデールの選手が前に出てくる。
千切れないように全力で付いて行く。
古河志林道の登りに入る。
キャノンデールの選手が交代後に後ろを見て明らかにペースを緩めた。
集団が来ているのだろう。
ここで無駄に踏まずに足を残して集団に残れるようにするのが正しいのかもしれない。
しかし、自分の場合ここで足を残したところで先頭集団に残れる可能性は無い。
ならば少しでも長く逃げるしかない。
逆にペースを上げて登りに突っ込んで行く。
しばらく踏んで後ろを見るとキャノンデールの選手は離れていた。
1人になってしまったが仕方がない。
そのままのペースで踏んでいく。
するとその直後にランプレの選手にすごい勢いで抜かれる。
付いて行こうという気すら起きない速度の差。
踏むのを止めそうになるところを堪えてペースを維持する。
ラスト2周の登りで勝負を決めるつもりの選手に抜かれていく。
しばらく自分の限界のペースで踏んでいると新城さんに抜かれる。
これには絶対付かないといけない。
ここで付いていければ何かが分かると思いもがいて着いて行く。
山頂まではラスト1kmを切っているはず。
しかし、相当キツイ。
無意識で唇がワナワナ震えている。
観客の方に見られていると恥ずかしいとも思うが気にしている余裕はない。
踏むことに全力を使って付いて行く。
しかし、そこで更に数名の選手が抜かしてくる。
それに付いて行くために新城さんペースアップ。
自分は足と集中の限界でペースダウン。
遅れる。
一度遅れるとすごい勢いで減速する。
山頂までの500mで第2集団にも抜かれ、単独で下る。
下り切ったところで自分よりも遅れていた選手が追いついてくる。
そこに合流して第2集団への復帰を目指す。
第2集団にはデネグリがいた。
そこまで戻れれば何か手助けができるかもしれない。
ラスト1周に入る1kmほど手前で第2集団に追いつくことが出来た。
しかし、足が相当限界。
次の登りで遅れるのはほぼ確定だろう。
集団の前方を見ると右京の選手が1人飛び出している。
誰かは分からないがせめて最後にあれだけでも潰すしかない。
先頭に出て残る力を振り絞って右京の選手を全力で追う。
ラスト1周に入るゴールライン辺りでその選手に追いついて自分の仕事は終了。
「Uターンして降りようか?」という考えも頭によぎる。
しかし、せっかく日本で開催されるHCクラスのレースでここまで残れたのだから一応完走しようと思い直す。
かなりユックリのペースではあったがそのまま1周走りきりゴールした。
感想
まず、ラスト1周ではたくさんのファンの方に応援や拍手をして励ましてもらえたおかげで頑張ってゴールすることが出来ました。
ゴールラインの所ではより一層激しく応援や拍手を送っていただきとてもうれしくて、手を振ったり笑顔で答えようかとも思いました。
しかし、結果をみれば自分は先頭集団に残れず千切れてしまい遅れてゴールしている選手。
自分の中でそういった選手が笑顔で手を振りながらゴールするという行動に違和感を感じてしまいそのような反応を返すことが出来ませんでした。
応援していただいたにも関わらずそれに反応することが出来ず不愉快な思いをされた方がおられましたらすみませんでした。
ここで謝らせてもらいたいと思います。
レースでは序盤のアクシデントによりクネゴとベルラートがリタイアしてしまったことがかなり痛かった。
しかし残ったメンバーで諦めずに頑張って走ることが出来たのではないかとも自分は思う。
ラスト2周半ほどの距離からキャノンデールの選手と逃げることが出来たのは自分にとってとてもいい経験になったと思う。
同時に今の強さでは逃げ切ることは絶対に出来ないと感じさせられた。
追いつかれてからも今まででは考えられないくらいに粘ろうと頑張ることが出来たと思う。
やはり全力で応援してもらえるとその応援以上に頑張ろうと思うことが出来るのだろう。
また、千切れてゴールするというのがいかに恥ずかしいかという事を改めて認識した。
そんな思いをしない為にもより一層力を付けなければいけないと感じた。
そうすることが出来れば、応援してくれているファンの方々にも笑顔を返しながらゴールすることが出来るようになるのだろう。
最後の展開に向けて逃げを打つという今までできなかった貴重な経験を得れたとともに、さらに力を付ける必要があると改めて実感ができ、来年度のシーズンへ向けての準備をモチベーションを高く持って臨むことが出来るとても良い今シーズンのラストレースだと感じた。
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