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JCL広島トヨタ広島ロードレース

クラス:JCL
開催地:広島県
日程:7月9日
距離:123km



天候:雨のち曇り

出場チームメイト:1新城雄大、3畑中勇介、4山本元喜、5山本大喜、8仮屋和駿、12トマ・ルバ


レースレポート

今回の作戦は全日本選手権に準じたものに各自のコンディションを加味して調整を加えたものになった。
具体的には全日本明けで全員若干のコンディション低下があるものの、絶不調というわけでは無い、ということで誰でも狙える方向で行きつつ、レース中にコンディションが良くない場合には随時情報共有を行ってプランを調整していくことになっていた。
しかし、トマはミーティングの段階でコンディションが良くない、と言い切っており、基本的にはアシスト役に回る、という方向になった。
基本の方針は全日本と同じく、レース中盤で三段坂を利用したペースアップによって集団の人数を絞り込み、キナンの人数的に有利な展開を生み出すことで終盤に向けて波状攻撃を仕掛ける、という作戦だった。
しかし、その前段階で人数のそろった逃げが決まりそうであれば、加わっていきドンドン前に合流するという形でキナンの人数を増やすという可能性も考えてはおり、どちらの展開であっても、後手を踏まないことに注意し、後半以降にキナンが人数的に有利、という状態を作るのがベースになっていた。
登りのペースアップは、7周回目の山岳ポイントの翌周でトマに一気に上げてもらうとこになっていた。
山岳ポイントの争いで消耗した集団に対し、次の周で全日本よりも激しく一気にペースを上げることで強烈な絞り込みを行うという予定だった。

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何事も思い通りにはいかないもので、レースが始まるとペースが速いものの逃げが決まるという感じではなく、攻撃的だが様子を探りながら、という雰囲気でレースが進んだ。
1回目の三段坂でキナンと自分に対するチェックのされ方を確認したかったので軽くアタックしたところ、小石選手が反応しそのままペースアップ。
1周目の三段坂からハイペースで登ることとなった。
その後もペースは緩まず。
展開が大きく動いたのは2周目の下り区間。
アベタカさんのハイペースでの下りで集団が分断され、20人弱の先行が生まれた。
思ったよりも早く分断が起きたことで少し予想外ではあったが、人数が絞り込まれることはキナンとしては悪い状態ではなかったので、協調してペースを上げた。
特に2周目の三段坂あたりではマトリックスの選手が単独でブリッヂを仕掛けていたので、突き放し切るためにペースを上げる必要はかなり大きかった。
逃げというよりトップ集団になった自分たちのグループにはブリッツェンとキナンが4人ずつで他の有力チームもエース級の選手が入っており、かなり早い段階ではあったが、この集団で勝負になる可能性が高いと考えられた。
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特にブリッツェンは増田さん、アベタカさん、小野寺選手、宮崎選手、とどの展開でも勝負できるベストなメンバーが入っている状態。
対するキナンは、トマ、畑中さん、自分、大喜とどちらかと言えば登りに振ったメンバーに見えるが、トマは不調と言っていたし、畑中さんは登りで苦しみつつも粘る脚質なので、少し不安があった。
しかもその後の落車により畑中さんがDNFになってしまい、ブリッツェン4人に対しキナン3人という若干不利な状況になった。
ブリッツェンは絶対にこのメンバーで勝負するべき状況であり、かなり積極的にローテーションに回ってペースを上げており、他のチームも同意見で逃げのペースは速かった。
しかし、キナンとしてはブリッツェンに人数的な有利を保たれたまま終盤にもつれ込むと、スプリンターがいない&人数的に不利、という2点で苦しくなることが見えていたので、何としても先頭集団で勝負を決める、という方向ではなく雄大や仮屋の追走を待ってもいいだろうという話になり、そこまでしっかりとローテーションを回すという感じではなかった。
トマが「山岳賞を狙うか?」と聞いてくれたので、「狙う」と答えると「登りで上げるから後ろに付くといい」と言ってくれた。
トマの発射で無事に山岳ポイント通過。
流石に自分とトマが先頭で踏んでいると、集団の判断として「山岳ポイントが終わったら帰ってくるから見送ればいい」とはならないようで、伸びながらも繋がっていたのを確認した。
周回数は減っていき、少しずつ人数が減っていく中で、序盤に少し重さを感じていた脚が比較的回るように感じ始める。
全日本後に少し休みはしたが、調子は悪くないだろう。
基本的には協調方向だった先頭集団も後方集団とのタイム差が広がることで、ゴールを意識した動きが生まれ始め、三段坂のペースが上がり始める。
3人いるキナンと4人いるブリッツェンに対して人数の少ないチーム登りでペースを上げることが一番効果的にダメージを与えられるからだ。
平坦で仕掛けたところで、人数を利用して追走されると攻撃を仕掛けた側の方が疲れることになる。
登れるメンバーがそろっていて、ブリッツェンの4人を少しでも削っていきたいキナンとして、この動きはプラスになった。
登りでは苦しんでいる雰囲気の選手も多いように見えたので、トマと大喜に「2回目の山岳ポイントを狙いに行くペースアップで、集団の絞り込みも狙いたい」と伝える。
その前に、他の選手に疲労をためておくために、6周目の三段坂のラストの坂は先頭で踏んでおいた。
集団の人数が絞られていることで、ペースアップがすぐに最後尾まで伝わるため、効果的なダメージを与えれる。
集団が大きいと、先頭でペースアップしても集団が徐々に伸びていくので、踏み損なことも多い。
ラスト4周の2回目の山岳ポイントで再びトマに発射してもらって、先頭を狙いに行く。
絞り込みの目的もあったので少し強めに踏んでいたのだが、山頂が近づいたタイミングで後方から、加速する際に発生する「ジャッ、ジャッ」というタイヤが地面をグリップする音が聞こえる。
瞬時に振り返るとブリッツェンの宮崎君が加速してきていたので、踏みなおして先頭通過した。
先頭通過した二人で一時的に抜け出したのだが、そのころには先頭集団が、ブリッツェン4人とキナン3人、チーム右京の小石選手と吉岡選手、というメンバーになっており、宮崎くんから「二人で逃げてチーム右京にダメージを与えましょう!」とお誘いを受けたが、キナン的にはブリッツェンにダメージを与えたく、そのためにチーム右京の二人と協調したいくらいなので、違うな、と判断してやめた。
ラスト3周の途中でトマから短く一言「I’m dead」と伝えられる。
ミーティングの時点で調子があまり良くないと言っていたし、限界なのだろう。
そうなると、実質的にはキナン2人、ブリッツェン4人、右京2人の形。
こうなると自分から積極的に動いて脚を使ってしまうと勝負できなくなるので、ポイントを抑えてチェックする形で動く必要がある。
限界宣言からもトマはアタックに反応したりしてくれていたが、最後に勝負する脚は無い、ということなのだろうか?と疑問が生まれたりもした。
ラスト2周に入り、トマから「登りで上げるか?」と聞かれたが、「チェックする形で他のチームをフォローしよう」と伝える。
一般的に、踏める選手が、集団を絞り込む動きを提案する場合、それは最後の仕事を意味する。
つまり、先ほどの提案を分かりやすくすると、「(最後の仕事として)登りで集団のペースを上げ(てダメージを与えて俺は千切れ)るか?」になる。
周りからはトマが辛いと感じているとは分からないわけで、たぶん集団に残っているだけでプレッシャーになり動きをけん制することが出来る。
それにまずい展開になった場合に牽引してもらうこともできるので、登りでの追い込みに脚を使ってもらわない方が絶対にいい。
ラスト2周に入るタイミングで吉岡選手が遅れ、下りとアップダウン区間で大喜とアベタカさんと小野寺選手が姿を消した。
アタックがかかる中で3人が牽制しあったことで、前の5人から離れたらしい。
メンバーは小石、増田さん、宮崎君、自分、トマ。
トマの限界宣言からずっと激しい展開が続いており、かなり心配。
最悪の場合は自分しか残らない可能性も考慮し、ポイントでは動きつつも積極的に崩しに行く動きはしない。
三段坂を越え、平坦区間へ。
自分の予想としては、大喜が限界で遅れたとは考えられず、おそらくアベタカさんと小野寺選手を道連れに千切れたのだろうと考えた。
ならば、次の動きとしては登りで二人を千切って先頭を追ってくるはず。
後ろの3人の中で登坂力は大喜が一番ある。
ならば、キナンとしては大喜が追い付いてくるのを待って、合流してキナンを3人にした方が有利に展開できる。
付き位置発動。
トマはローテーションに加わっていたが、自分は最後尾で後ろを確認し、脚を温存しつつ、大喜を待つ姿勢。
増田さんから「なんで前引かないの!?」と聞かれたので「大喜が来るので!」と伝える。
1回目はローテーションをスルー出来たが、2回目のタイミングで自分が後方を確認していると、増田さんも後ろを見て誰もいないことを確認してから「来ないよ!」と言われる。
確かに直線区間で見ても全然居ない。
後ろにはアベタカさんと小野寺選手もいるわけで、大喜が単独で来るという確証もなく、追いつかないと判断してローテーションをまわしているブリッツェンの増田さんと宮崎君からすれば、大喜を理由に自分が脚を休めているように見えるはず。
そして半分正解。
仕方がない、と思い1回加わったが、やはり可能性を捨てきれない。
入った際に増田さんから「ありがとう」とお礼を言われた直後で心苦しかったが、もう一度抜けて増田さんが下がってきたタイミングで「タイムボードが表示されたら入ります!」と伝える。
先頭と後方とのタイム差は不定期にコミッセールバイクからブラックボードにタイム差が記載され、それによってレースの大まかな状況が把握できる。
タイムボードが提示された際に大喜が追いつく圏内に居れば待ちの姿勢、いなければローテーションに加わる、というのが一番説明がつくはず。
で、その少しあと、ラスト1周に入るタイミングで後方と1分数秒と表示され、これは追いつかんな、と判断してローテーションに加わった。
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小石の勢いが落ちないアタックの連続で宮崎君がフォローできなくなり遅れ、生まれた差を自分が追った。
無理に踏めば追いつける気はしたが増田さんが後ろに付いており、小石に追いついたタイミングでカウンターアタックをかけられると辛い。
一気に離れないようにかつ、増田さんがブリッジを仕掛けた際に反応できるように踏んでいるとトマが前に出てきてくれて追ってくれる。
追いつかれると一番つらい登りの入り口で小石選手をパスし、そのまま加速するトマ。
ここでペースが落ちると小石が粘る可能性があるので、増田さんが動かないのを見て、自分がアタックを仕掛ける。
三段坂の序盤で独走に持ち込めれば余裕を持って逃げれるし、平坦区間で追いつかれたとしても追っている側の方が脚を消耗するはず。
アタックして後ろを確認すると増田さんだけが追ってきており、トマは離れてしまった。
結構前に限界と言われていたわけだし、限界だろう。
増田さんの勢いが良く、追いつかれると感じて少し踏みを緩めると追いつきざまにカウンターでアタックを仕掛けられ、急いで反応して追いつく。
アタックした側の方が辛いはずなので、もう一度仕掛けに行きたい。
でも、再びのカウンターが怖いので、カウンターされた際のダメージが大きくなりにくい、湖畔に入る手前の急勾配区間で仕掛ける。
そこでも増田さんに追いつかれる。
粘りが凄い。
諦め悪く、三段坂最後の勾配が急な区間でもう一度仕掛ける。
この区間であればカウンターを仕掛けられても頂上までが短いので粘り切れる。
それに自分としても踏み切れるはず。
そしてスプリントになるなら、とにかく脚を削っておく必要がある。
そこに加えて、あの増田さんを登りで千切りたい、という意地みたいなものがあった。
しかし、しっかりとフォローされる。
カウンターアタックを警戒して並走状態までペースを下げるが、増田さんも辛そう。
自分も滅茶苦茶辛い。
そして増田さんが後ろを振り返る。
なんで?と思い自分も後ろを見ると、そこにトマがいた。
トマがいた。
三段坂の序盤で離れたので、限界で居ないと思っていたが、淡々と登り続けて数秒のところにトマが来ていてビックリした。
嬉しすぎる誤算。
トマが追いつきざまに下りでアタックし、増田さんが付いたので、そのカウンターでもう一度仕掛けようと踏んだが、トマの先頭を引くペースが速く、速度差を付けることが出来なく、横に増田さんに即座に反応されたので、すぐにやめる。
そこからトマの先頭固定が始まる。
トマ、増田さん、自分、の並びなので、増田さんがアタックを仕掛けたら、いつでも反応できる。
そしてトマがずっといいペースで牽いているので、背中から「スプリントで勝て」というプレッシャーを感じる。
増田さんのアタックに警戒しつつ、3人のままでラストの直線に入る。
増田さんが早々に仕掛けてくれればフォローして最後に抜きに行くつもりだったが、ラスト150mで動かなかったので、先に仕掛けスプリントを開始した。
そのまま全力で踏み切って1着でゴールできた。
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感想

キナンの有利な展開である人数で波状攻撃を仕掛けるという展開に持ち込めず、トラブルもあり、かなり焦ったが終盤で上手く連携が取れて勝てて本当に良かったと思う。
個人的には結構久しぶりの優勝だったので、本当に気持ちが良かった。
あと、昨年に続き山岳リーダージャージも獲得できたのでうれしい。
数レースは山岳リーダーを維持できそう。

最後の三段坂ではトマが居ることに気づけていれば違う動きもあったのだが、限界宣言からその後もアシストの動きをずっと繰り返していてくれたので、完全にいないと思い込んでしまっていた。
チームの連携あってこその勝利なのは間違いなく、万全の状態で最後の三段坂に入り、増田さんを千切り切れなかったというのが、個人的な悔しさと、やはり増田さんは強い、と改めて実感した。


レースの中継映像



キツさレベル

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久々に最後まで完全に出し切った感覚のレースだった。
終盤に全力を出し切って勝てたので、達成感もあった。 amazonをお気に入り登録される際はこちらからどうぞ!

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